教養としてのゲーム史
著 多根清史
ちくま新書
777円
男の休日着こなしの方程式
著 森岡弘
講談社
1365円
ガラクタ捨てれば自分が見える――風水整理術入門
著 カレン・キングストン
小学館文庫
540円
人間だれしも落ち込むときがある。円安で損したとか彼女が浮気したとか、人生には色々と不運が待っている。最近は幸運の方をとんと見かけない気もするが、そんなときの気分転換にはゲームだろうと『教養としてのゲーム史』を手に取った。
いわゆるこれだけはやっとけ的なゲームを知るために読んだのだが、やがてこの本のほうがおもしろくなってしまった。内容は、スペースインベーダー時代から『ラブプラス』までのビデオゲーム史をおさらいしたものだが、制作背景や裏話が満載。たとえば『ゼビウス』の謎の地上絵は、マップの空き地に苦しまぎれに描いたものが大うけした等々。ハード性能を抑えると“詰め込み”でなく“編集”へと作り手の動機が変わるため傑作ができるといった分析にも納得。一番ウケたのは『ときメモ』解説で、一見ナンパなギャルゲーだが“ラスボス”(落ちないヒロイン=藤崎詩織)を配置したことで硬派ゲーマーの理解を得たとの一文には、思わず吹き出してしまった。
次に、気分をアゲアゲにするには服を変えよう、との女子的発想で『男の休日着こなしの方程式』。案外悩むカジュアル服について、服飾専門家がこれを揃えろと具体的なアイテムを解説。マフラー類は防寒と思うなとか、ニットは素肌に着ろといった指摘には目からうろこ。なにより着用モデルが中年で、髪が無い点には好感が持てる。
『ガラクタ捨てれば自分が見える』は、文字通り自分を変えたいときに最適と思い読んだ。よくある断捨離本だが、これは圧倒的な説得力。風水を信じているわけではないが、書き手側のそうした信仰心に裏付けされた断言口調と理由づけは、こちらの反論を許さぬ迫力がある。気が付くと色々捨てている恐ろしい一冊だが、読み進めると「必ず着なくなるから、精神状態がよくないときに服を買うな」と書いてあった。風水のプロにはこちらの心を読む力でもあるのか……。
前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテイメント”をテレビ等で展開中。
※本記事は週刊アスキー4月2-9日号(3月18日発売)の記事を転載したものです。
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