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【私のハマった3冊】薄毛はなぜ劣等感をもたらすのか? 複雑な“ハゲのひみつ”

2013年06月22日 14時00分更新

936BOOK

学研まんが 大人のひみつシリーズ
からだのひみつ

原作 こざきゆう、漫画 山根あおおに、新沢基栄、しりあがり寿、平松伸二、おおひなたごう
学研
1050円

ハゲに悩む 劣等感の社会史
著 森正人
ちくま新書
798円

薄毛の品格
著 小杉竜一
幻冬舎よしもと文庫
560円

 子供のころに、学研まんが『ひみつシリーズ』を愛読していた人は結構多いと思う。そのひみつシリーズが最近、『大人のひみつシリーズ からだのひみつ』として復活した。収録されているまんがは、『メタボのひみつ』、『痛風のひみつ』などさすがに大人向け。とりわけ私の興味を引いたのが、山根あおおにの『ハゲる・ハゲないのひみつ』だ。これは、往年の学研まんが読者にはおなじみのキャラ・名探偵カゲマンが、男性特有の脱毛症のメカニズムを探り、その治療の最前線を紹介するという内容。カゲマンの髪がすっかり抜けてツルツル頭になってしまったという設定が泣ける。私自身、30歳前ぐらいから前髪の後退が進んでいるだけに、なおさら。

『ハゲに悩む』の著者・森正人も、私と同世代でやはり薄毛に悩んでいるという。そもそもなぜ薄毛であることが劣等感をもたらすのか? 森は、過去の雑誌記事や、育毛剤やカツラメーカーの広告などをひもときながら、社会における“ハゲ”の扱われ方の変遷をたどっていく。

 いまではハゲを隠さず、一種のファッションと見なす風潮もある。とはいえ薄毛の人間にしてみれば、本書のあとがきにあるように「ハゲなんて気にすることない、かっこいいじゃないかと頭では分かっていても、改善されると聞くと期待感が刺激される」のもまた事実だ。

 お笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一は『薄毛の品格』のなかで薄毛の男たちに向け、卑屈にならず、ポジティブに生きようと訴える。その考えは、自分の薄毛を笑いに変えてきた彼ならではといえる。

 ただ、その小杉も、巻末の対談でモト冬樹から、毛根の幹細胞を培養した液による発毛術が開発中だと教えられ、心を動かされている。かように薄毛の悩みは根深いものがある。卑屈になることはないが、治せるものなら治したい。そんな私たちの複雑な感情を、薄毛でない人たちにもぜひ知っておいてほしい。

近藤正高
ライター。『ひみつシリーズ』を読んで育った30代。作者のなかでも内山安二先生がいちばん好きでした。

※本記事は週刊アスキー7/2号(6月18日発売)の記事を転載したものです。

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