コミック 貧困大国アメリカ
著 堤未果
PHP研究所
1260円
ドルの崩壊と資産の運用
著 ジェームス・ターク、ジョン・ルビノ
同友館
1680円
夢をかなえる。
著 澤穂希
徳間書店
1260円
米国主導のTPPに参加すると、日本は彼らの食い物にされるらしい。その真偽はともかく、最近は確かにアメリカ必死だな、と思わせる事が多い。世界最強の超大国は、なぜこんなにもイタい国になってしまったのか。
『コミック貧困大国アメリカ』でその理由がわかった。新自由主義の末路をルポした堤未果の名著の漫画化だが、自由の国の悲惨な実態には衝撃の一語。保険会社が支払いを渋るため、病気になると中流家庭は破産──なんてのはマイケル・ムーアの映画でおなじみだが、本著はその先、たとえば医師でさえ保険会社の定期審査に落ちると失職する恐るべき現実まで明らかにする。勝ち組であろうとひとたび転べば一巻の終わり、これぞまさにスペランカー社会。これなら日本のカネをなりふり構わず狙うのもうなずける。
だがこんな逆境でも儲け上手はいる。『ドルの崩壊と資産の運用』は、ドル高だった2007年にこんにちのドル崩壊を正確に予測。私はあえて数年前の経済本を読むのが好きなのだが、それは時折こういう予言書のごとき本に出会えるからだ。そうして見つけた著者の最新作にならえば、私の資産も激増というわけだ。今回も大喜びで調べたが、彼はその後一冊も出してなかった。早く続き書いてくれよ!
落ち込んでも仕方がないので『夢をかなえる。』を読む。なでしこジャパン世界一の立役者、澤穂希による幸せに生きるヒント集。ダンス下手でNHKのアルゴリズム体操の収録でNGを連発したとか、米国人の元カレなど裏話的なネタも面白いが、夢叶う人生を送るための具体的な心がけの数々には目からうろこ。たとえば「目標は常に口に出す」。彼女は、リードを許したW杯決勝時にも「逆転できる」とつぶやきながらプレーしたそうだ。すっかり感化された私は、毎日「資産倍増、資産4倍増」とブツブツつぶやいている。きっとこの号が出るころには、左団扇で暮らしていることだろう。
前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテイメント” をテレビ・ラジオで展開中。
※本記事は週刊アスキー12月20日号(12月6日発売)の記事を転載したものです。
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