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【私のハマった3冊】アホなSF短編、イジメの空気感、思春期の一瞬、注目のコミック3冊

2013年12月21日 15時00分更新

960BOOK

へんなねえさん
著 吉富昭仁
太田出版
683円

聲の形 1
著 大今良時
講談社
450円

きれいなあのこ
著 吉田丸悠
新書館
756円
 

 全然違う3ジャンルから紹介しよう。

 一つ目は、吉富昭仁『へんなねえさん』。エロい、そしてアホっぽいSFの短編集である。

 表題作だけ紹介しておくと、ある日突然美少女の姉さんが家族として出現するが父母は一切不審に思わない。姉の正体は地球人の“シラコ(精液)”を採取するために異星人が送り込んだサイボーグなのだが、“シラコ”を大量に採取するために、美少女の姉さんはセックスの最中に抜群にエロい動きをする。しかし、このサイボーグ姉さんのエロい動きは、実は髭もじゃのおっさん異星人が体中にセンサーをつけてコマンドしているだけなのである。「中に出してぇー」とか「お口でしてあげる」とかヒゲの男が叫ぶコマがフラッシュバックしそうだ……。

 大今良時『聲の形』は、読切りがネットで大反響となり、連載化されたもの。耳の聞こえない障害をもつ女の子が転校してきて、初めは親切だったクラスメイトもだんだんと面倒くさくなっていき、やがてイジメにかわっていく。それをイジメの先頭に立ち、やがて自身もイジメられていく男子の視点で描いていく。障害を描くというより、イジメにまつわる空気感の描写が凄い。読切り分を再編したのが1巻だが、これをどう2巻以降仕上げるのか、期待する。

 最後は吉田丸悠『きれいなあのこ』。百合。解散することになるアイドルグループをめぐるオムニバスだ。表題作が一番シンプルでいい。“天然清純派”が看板のグループなのだが、メンバーの一人・真鈴は常々クラスメイトの谷本という女子こそ本当の“天然清純派”ではないかと憧れている。その二人の関係が生まれ、壊れ、そして再生するまでを短いページで描く。大人からみると“ささいな”ことがお互いの間に一瞬で深い亀裂を走らせる。その感覚が、いかにも思春期。その一瞬をとらえることに見事に成功している。美しい6編である。
 

紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。

※本記事は週刊アスキー1/28増刊号(12月16日発売)の記事を転載したものです。

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