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【私のハマった3冊】自分は天才と信じ、美大をめざす 傑作の多い美大受験マンガ

2012年08月27日 13時00分更新

私のハマった3冊

かくかくしかじか 1巻
著 東村アキコ
集英社
780円

マスタード・チョコレート
著 冬川智子
イースト・プレス
1050円

ジンクホワイト
著 小泉真理
祥伝社
650円

 ひとつめは東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社)。作者の自伝。宮崎の田舎で(失礼)自分は天才と信じ、美大合格→在学中漫画家デビュー→マンガがドラマ化→豊川悦司と結婚→時々は読切りを描く優雅な家庭人……みたいなアホ全開の人生設計で美大受験準備を始める。勉強ができない東村は学科の最低ラインの点数をとるために、“問題を読まずに答えがわかる徹底攻略法”だの“ダウジング(一種の超能力)マスター”などの参考書?に手を出す始末。「これや……ワイにはもうこれしかないんや……」と謎の河内弁で参考書を買う決意をする東村のテンパった姿に、我々は腹を抱えるしかない。少なくとも1巻は笑い通しのギャグ自伝エッセイコミックである。

 2つめは冬川智子『マスタード・チョコレート』(イースト・プレス)。ケータイマンガとして人気が出て、文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した。人と交わることがキラいな女子高生(津組倫子)が美大受験のために画塾に入る話。無表情・三白眼・不思議ちゃん(そして巨乳)の津組。実は“自分と同じような孤独を愛している人とつながりたい”願望をもっているというテーマが展開されていく。男の読者であるぼくは「津組の寂しさをわかってあげられるのはオレだけかも」というスケベ心でこの作品にのめり込んでいけた。

 3つめは、小泉真理『ジンクホワイト』(祥伝社)。美大受験マンガの走り。絵の技術の要諦をつかんだ瞬間の喜び、過度に集中したときに出てくる“脳汁”、恋愛に不器用に落ちこんでいく様が、ひとつひとつとてもリアル。もう10年も前の作品だが、ぼくがこのジャンルに目覚めたきっかけであり、くり返し読み返す好きな作品のひとつである。

紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。

※本記事は週刊アスキー9月4日号(8月20日発売)の記事を転載したものです。

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