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【私のハマった3冊】震災・原発事故を経た、いまこそ読みたいディストピアマンガ

2011年06月13日 17時00分更新

wambook

自殺島 1
著 森恒二
白泉社
540円

漂流教室 1
著 楳図かずお
小学館文庫
610円

増補版 まんが 原発列島
著 柴野徹夫
大月書店
1260円

 津波に人と街が呑まれていく光景は、大災害やディストピアを描いた多くの虚構表現を無にした。現実のほうがはるかに先鋭的で圧倒的だったからだ。未曾有の震災と原発災害を経た目で、もう一度、絶望郷・パニック・大災害を描いた漫画を読んでみようではないか。

 最初は森恒二『自殺島』(白泉社)。“無気力でダメな若者”たちを法律も医療も届かない孤島に捨て、そこでの若者たちの行動を描いた話だ。主人公が“生の実感”を重ねて人間の強さを取り戻していく展開は、率直に言って、震災の現実を見たあとではいかにも説教臭い。実際、新聞のインタビューで森は若い世代への説教を執筆の動機として語っている。だが、そのバランスの悪さが“いやな感じのする作品”として妙に印象に残ってしまうのである。狩猟や漁労といったサバイバルの知識が随所に披露されるのも意外な味付けになっている。

 次に、楳図かずお『漂流教室』(小学館文庫)。いわずもがなの古典的名作。小学校の教室がある日突然、食料も水もない、あるのは有害で奇妙な生物だけという荒野に漂流してしまう。この作品世界に描かれた危機と荒廃は、震災後のいま読んでも現実には浸食されない十分な強靭さをもっている。そして子どもたちが絶望のなかで共同する姿は、震災後を生きるぼくたちを励ます、ひとつの規範ともいうべき美しさを保ち続けている。

 最後は、『まんが 原発列島』(大月書店)。福島第一原発の事故を受け、20年ぶりに増補版として再刊された。原発の取材をはじめた駆け出しライターが不当な圧力に屈せず、原発の真実を描くという筋立てで、正直、物語という点での完成度は低い。しかし、無数の圧力の恐怖は、原作者のジャーナリスト柴野徹夫の実体験にもとづいており、原発の利権同盟、いわゆる“原子力村”が世論を誘導し封じ込めようとする描写には不思議な迫力と説得力がある。

紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。

※本記事は週刊アスキー6月21日号(6/7発売)の記事を転載したものです。

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