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【私のハマった3冊】これからの博物館、図書館のあり方を考える3冊

2013年04月19日 14時00分更新

私のハマった3冊

モバイルミュージアム 行動する博物館
著 西野嘉章
平凡社新書
798円

理想の図書館とは何か
著 根本彰
ミネルヴァ書房
2625円

インフォメーション 情報技術の人類史
著 ジェイムズ・グリック
新潮社
3360円

 今年3月、東京駅前のJPタワー内に“インターメディアテク(IMT)”というミュージアムがオープンした。これは東京大学総合研究博物館が日本郵便との連携のもと実現したものだ。このプロジェクトを推進した西野嘉章は、IMTを、それまで同博物館が試みてきた“モバイルミュージアム”の集大成と位置づける。

 題名もずばり『モバイルミュージアム』という本は、この構想について西野自ら解説したものだ。それによればモバイルミュージアムとは、展示コンテンツをユニット化し、それを単体ないし複合体として、博物館と連携した国内外の各種施設や場所で公開するものだという。

 既存の博物館は、多くの役割を求められ組織も施設も肥大化し、身動きがとりにくくなっている。そのなかでほとんど公開されずにいる所蔵資料も少なくない。だがそうした資料も、モバイルミュージアムの手法を導入することで、活用する機会が増えるというわけだ。

 博物館と同様、図書館についてもそのあり方をめぐりさまざまな議論がある。根本彰『理想の図書館とは何か』は、それら議論を整理した上で図書館の役割を再検討している。今日僕らのイメージする、資料の貸出しを中心とした図書館が、'60~'70年代に東京都日野市で展開された移動図書館(いわばモバイルライブラリー)でのサービスをモデルに、全国へ広まったものだという事実は興味深い。

 図書館の起源は古代エジプトのアレクサンドリア図書館ともいわれる。情報技術の発達をたどった大著『インフォメーション』では、この図書館の後継者として、人類の全知識を建物ではなくウェブ上で保存、共有しようともくろむウィキペディアがとりあげられている。日々項目が増大しつつあるウィキペディアを、著者のグリックはルイス・キャロルの小説に出てくる原寸大の世界地図になぞらえているが、言いえて妙だ。

近藤正高
ライター。ウェブサイト『cakes』にて亡くなった著名人の足跡をたどるコラム『一故人』を連載中。

※本記事は週刊アスキー4月30日号(4月16日発売)の記事を転載したものです。

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