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【私のハマった3冊】“戦闘美少女”が小暴力どもを殲滅 手垢のついた設定が痛快によみがえる

2013年06月29日 13時00分更新

937BOOK

デストロ246 1
著 高橋慶太郎
小学館
560円

びんぼうまんが家!都内で3万円の3DKに住んでます 1
著 なかむらみつのり
芳文社
840円

竜蹄の門 1
著 やまさき拓味
リイド社
620円

 女子高生が主人公になって過酷な戦闘アクションを展開する……最初は目もくらむようなギャップのある設定だったに違いないが、こうした“戦闘美少女”モノは、いまや珍しくもない。

 ところが高橋慶太郎『デストロ246』はこの手垢のついた設定をよみがえらせる。

 主人公はもちろん、殺し屋の女子高生たちが、裏社会の勢力の手先として、凄惨な殺し合いを演じる。典型的な“戦闘美少女”の作品だ。

 ぼくは今この瞬間、高橋の作品に夢中であるが、その醍醐味は、痛快さにある、と思う。

 マフィア、ヤクザ、チンピラといった小さな暴力が、初めはこれでもかというほど、徹底的にこの美少女たちを侮る。読んでいるぼくらは、「あー、こいつ、目の前の女の子をバカにしまくりだけど、ホントはお前たちなんか足下にも及ばないほどスゲエ技術をもっているんだぜ!」などと歯がみをしながらページを繰る。

 一転、凶悪な顔に変わる少女たちは、この小暴力どもを殲滅する。その反転がいかにも痛快で、そのタイプのシーンだけでもゾクゾクしてしまう。

 次は、なかむらみつのり『びんぼうまんが家! 都内で月3万円の3DKに住んでます』

 貧乏漫画家が東京で公営住宅に当選するまでをリアルなルポにしたものだ。

 格差や貧困があれだけ取りざたされているのに、都営住宅はすでに14年間新規建築がなく、倍率が数十倍になっている。

 激烈な抽選競争はホントのところ、どうなっているのかーーたとえば、ぼくも「郊外や古い住宅は倍率が低いけど、ああいうところはどうなっているんだろう?」という疑問があった。そのあたりを実体験でおもしろおかしく描いている。

 最後は、やまさき拓味『竜蹄の門』。近代競馬の幕開けのころを描くのだが、幕末の政治ドラマと一体に描いているのが楽しめる。

 

紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。

※本記事は週刊アスキー7/9-16合併号(6月25日発売)の記事を転載したものです。

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