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【私のハマった3冊】“食べる”ことは“生きる”こと、食欲と色欲を刺激する3冊

2011年12月19日 13時00分更新

wambook

飲食男女
著 久世光彦
文春文庫
570円

檀流クッキング
著 檀一雄
中公文庫
700円

新装版「こつ」の科学
著 杉田浩一
柴田書店
1260円

 食べることは、生きること。“食”をテーマに、エロスからサイエンスまで3冊選んだ。

 まず『飲食男女』、みだらで、せつなくて、うまそうな短編集。食べること、味わうことは、なにも“食”に限らない。食べることには、男と女の味がする。食べ物をネタに、甘辛い艶話が組んず解れつする様に、食欲と色欲の両方を刺激される。少年時代の甘酸っぱさは“イチゴジャム”に、むんむん熟れた情欲は“腐りかけの桃”、不倫のほろ苦い後悔は“おでん”に象徴される。読了後の副作用として、同じものを食べるとき、これを思い出して悶々とするかも。食事と色事は“生きること”という根っこにつながっているからね。

 次の『檀流クッキング』は、安くて野蛮でやたら旨いレシピ集。そこらの料理本と一線を画しているのは、分量完全度外視なところ。「塩だと? 君の好きなように投げ込みたまえ」なんて豪快に言い切るが、実際やってみるとなんとかなるから痛快だ。文字だけなのに読んでるとよだれが湧いてきて、“作りたい”欲がむくむく沸きあがる。試しにイカのスペイン風(プルピートス)をつくったら200円ですばらしく美味な一皿ができた。本書の一品一品を、わが腕に叩き込むように覚えてゆきたい。

 そして『「こつ」の科学』は、科学的に裏付けられたノウハウ集。「卵は洗うな」とか「味付けの塩は最後に」、あるいは「肉を焼くなら小麦粉まぶせ」といった調理のコツに対して、実証的に答えている。経験則や言い伝えには、ちゃんとワケがあることが納得できてうれしいのと、料理を通じて科学的な知見を深めることができてありがたい。さらに、“煮る”、“蒸す”、“焼く”、“揚げる”などの本質がわかる。それぞれのプロセスは、素材に対し何をしているのか、といった観点から捉えなおすことで、納得ずくの料理ができる。

 あなたのカラダは、食べたもので成り立っている。良い“食”で良い人生を!

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー11月8日号(10月25日発売)の記事を転載したものです。

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