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【私のハマった3冊】告知の心構えから最期の迎え方 がんを予習する3冊

2014年03月01日 10時00分更新

969BOOK

病の皇帝「がん」に挑む 上・下
著 シッダールタ・ムカジー
早川書房
各2205円

がんの練習帳
著 中川恵一
新潮新書
735円

隠喩としての病い/エイズとその隠喩
著 スーザン・ソンタグ
みすず書房
3360円
 

 受験や結婚、セックスから子育てまで、人生は初体験の連続だ。世にマニュアルがあふれているのは、本番前に知っておきたいニーズの裏返し。このまま生きると、わたしは、おそらく“初がん”になるだろう。その時あわててガセネタつかまぬよう、予習に最適な赤本をご紹介。

『病の皇帝「がん」に挑む』は、人類はがんをどのように理解したかを多面的に描いた“がんの伝記”だ。がんとの全面戦争の叙事詩なだけでなく、対峙した医者たちの手記であり、患者たちの闘病記になっている。ウィルスや遺伝学からのアプローチ、古代から現代に至る医療技術の変遷を追う一方で、環境汚染の疫学論争を扱い、たばこ撲滅キャンペーンによる第三世界への“がんの輸出”といった今日的なテーマまで広げる。

『がんの練習帳』は、患者と家族から見たケーススタディ集だ。告知されたときの心構え、検診や療法選択のコツ、費用から最期の迎え方まで、すべて練習できる。もちろん具体的な療法や症状は人によるが、どうやってがんとつきあっていくかを考える指針になる。不安や恐怖のあまり、ネットの寓話を信じ込んだり、病でなく医者と闘ってしまった話を聞くたび、「これを読んでたら……」と強く感じる。

『隠喩としての病』は、不安や恐怖を除く助けになる。なぜ自分なのか? どうしてこうなったのか? ただでさえ弱っているにもかかわらず、自分で自分を責めてしまう。それは巧妙に仕組まれた隠喩の罠に陥っているのだと告発する。がん、結核、らい病、チフス……病をとりまくテクストを読み解きながら、そこにひそむ権力とイデオロギーを解体する。がんは重大な病気かもしれないが、呪いでも罰でもない、そこに“意味”などないのだというメッセージが、くりかえし伝わってくる。

 もちろん読んだら大丈夫というわけではないが、しなくていい苦悩を取り除いてくれる。がんバージンは、予習しておこう。
 

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー3/11号(2月25日発売)の記事を転載したものです。

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