ギガントマキア
著 三浦建太郎
白泉社
648円
まりかセヴン 1
著 伊藤伸平
双葉社
648円
冬の巨人
著 古橋秀之
KADOKAWA/富士見書房
583円
今や読売巨人軍に比肩する、新たな“巨人”としての知名度を獲得した、大ヒットコミック『進撃の巨人』。しかし、巨人とは、太古の神話から現在まで、数多くの物語の中で描かれ続けてきたモチーフでもある。そんなわけで今回は“進撃するだけじゃない巨人”3冊である。
『ギガントマキア』は、『ベルセルク』の三浦健太郎が描く、プロレスの巨人。激変した環境の元、異形の姿に進化した亜人間たちは、巨人を使役する人類の帝国の侵略を受けて、絶滅の危機に瀕していた。そこに現われた救世主は、ひとりの少女、そしてひとりのレスラーだった。異なる民族の対立と和解、巨人同士の神話的戦争。ひとつだけでも大きすぎるテーマを、プロレスの“あえて相手の技を受けて倒す”という美学を軸にして一冊に繋ぎあわせてしまった、超高密度のSFコミックだ。
一方、やっぱり巨人は怪獣と戦ってこそ、という読者には、女子高生の巨人、伊藤伸平『まりかセヴン』がオススメ。謎の小役人的宇宙人セヴンと一体化した三つ編み女子高生が、三つ編み巨人に変身して怪獣やら宇宙人と戦う、特撮愛にあふれる作品。実は、美少女で特撮巨大ヒーローというネタは意外にもポピュラーで、他にも高遠るいのマンガ『ミカるんX』や山本弘の小説『MM9』などがある。すべてはやはり、『ウルトラマン』の巨大フジ隊員まで遡るのだろうか。
そして古橋秀之『冬の巨人』は歩く巨人。歩くだけかと言うなかれ、その背に十万人が住む街が乗るほど巨大なのだ。雪に閉ざされた終末世界で、人類の唯一の生活圏となった街では、巨人の歩みがそのまま暦となり、巨人が踏み出すと、下り坂が上り坂になったりする。そんな異色の都市で描かれる破壊と再生のボーイミーツガールだ。
さてはて次の巨人はいかなる姿か。ポスト『進撃の巨人』はどこから現われるのか……。今後とも注視していきたい。
前島賢
ライター。SF、ライトノベルを中心に活動。著書に『セカイ系とは何か』(星海社文庫)がある。
※本記事は週刊アスキー9/16号(9月2日発売)の記事を転載したものです。
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