【私のハマった3冊】流浪する見世物小屋一座 猟奇的興味から反転する爽快感
2014年04月19日 15時00分更新
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五色の舟
漫画 近藤ようこ、原作 津原泰水
エンターブレイン
842円
独身OLのすべて 1
著 まずりん
講談社
1026円
どうにもこうにも 1
著 日下直子
マッグガーデン
617円
最初に紹介するのは、津原泰水の小説を原作に、近藤ようこがマンガ化した『五色の舟』。
舞台は戦前。各地を流浪する見世物小屋の一座が主人公だ。両脚を失った旅芝居の元花形。膝が逆に曲がる女。双子の身体がくっついたまま生まれてきた少女。“こびと”のように背が伸びない怪力の少年。そして、腕がなく肩から直接手が生えている少年。
一座は、体は牛だが、頭は人間という“件(くだん)”がいる家を探し訪ねる。件は未来を予言できるという。
正直、ぼくはこのマンガをまずは猟奇的興味をもって読み始めた。例えば一座の少年と少女の“まぐわい”を客に見せたりするのだ。見世物小屋に興奮した観客と同じレベルでこの本を読み進めた。そのうえで、やがて運命が分かれていく鮮やかな反転の爽快感を味わってほしい。
次は、まずりん『独身OLのすべて』。ギャグ4コマだ。リア充のOLたちの生活や価値観を、非モテのOL3人組が皮肉たっぷりに嘲弄する。
カフェでイチャつく女友達とその彼氏。あまりのいたたまれなさ。誰も止められない。主人公のひとりは場の空気を変えるため暴挙に出た。突然ゲロを吐いたのである! 「ゲホッ ビチャ ビチ」……いや、確かに場の空気は一変したんだけどさあ、お前はそれでいいのか。
クールかつシニカルに、上から目線でリア充OLの価値観を乗り越えようとするあまり、とてつもなくイタい存在になっている3人が愛おしい。
最後は日下直子『どうにもこうにも』。漫画家として新人大賞は取ったもののその後鳴かず飛ばず。ネームすら通らない屈辱の日々。そんな主人公が、ひょんなことから専門学校でマンガを教える講師になる。
漫画家として成功できなかった自分を意識させられ続け、なかおつマンガという世界から離れられない、主人公の悶絶が、読む者に伝わってくる。
紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。
※本記事は週刊アスキー4/29号(4月15日発売)の記事を転載したものです。
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