2666
著 ロベルト・ボラーニョ
白水社
6930円
2052
著 ヨルゲン・ランダース
日経BP社
2310円
2
著 野崎まど
メディアワークス文庫
746円
妙な偶然で、数字がタイトルの本ばかり立て続けに読んだのでご紹介。いつもの読書と違うところを揺さぶってくる、変わった体験を請け合う。
まず『2666』、これはすごい経験だった。“おもしろい”を突き抜けている。“余韻が残る”といった可愛らしいものではなく、ずっと頭から離れないのだ、呪いのように。鈍器並みの分厚い装丁は、実は五冊の小説をまとめたもの。それぞれ独立しているようでいながら、互いに連環し、循環する。謎の作家を巡る物語から、猟奇的な連続殺人事件を経て、進めるたびに振り返り、確かめ、驚愕しながら読み戻る。五つの小説の全てのピントが重なるとき、すごい既視感に苛まれることになるだろう。
次は『2052』。今後40年の未来予測だが 、半端ない怒りに焼かれながら読んだ。食糧やエネルギーは足りるのか、次の世代は莫大な借金や年金負担を受け入れるのか、次に覇権を握る国はどこか、気候変動はどんな影響を与えるのか、具体的に描かれている。腹が立つのはこの書き手。北欧の裕福なエリートで、自分の世代の豊かさは環境破壊や世代搾取の上に成り立っているのを自覚しながら、「あとはよろしく」、「俺は警告したから」的に述べているところ。まさにオマエが言うなと歯軋りするが、予測の一つ一つが膨大なデータと緻密な考察に裏打ちされた確度の高いもので、ぐうの音も出ぬ。著者に反発するもよし、一緒におセンチなるもよし。
そして『2』。ウソみたいだろ、これ、ラノベのタイトルなんだぜ。そして読了したら、絶対表紙をガン見する。『2』としか書いていないのに、込められた意味に震えるはず。駆け出しの役者の若者と、映画を撮ろうとする女の話なのだが、ひたすらおもしろいおもしろいと読まされるうちに、とんでもないところに連れていかれる。曰く、「この本は、すべての『創作』の極地に至るものである」だそうな。これは、激しく同意する。
Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。
※本記事は週刊アスキー3月19日号(3月5日発売)の記事を転載したものです。
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