官邸敗北
著 長谷川幸洋
講談社
1680円
オバマ+コノリーvs.ティーパーティー
著 海野素央
同友館
1575円
プーチン最後の聖戦
著 北野幸伯
集英社インターナショナル
1680円
じつは3年前、民主党への歴史的な政権交代直前にもこの欄を担当した。あのとき私は新体制誕生を予測するとともに「でも裏切られるけどネ」と書いた。まさに、マヤ暦も裸足で逃げ出す天才予言者といってよい。
そんな天才でも、なぜあの政権交代が失敗したのか詳しいことはわからなかった。それを知ったのは『官邸敗北』を読んだ時だ。テレビ等でもおなじみ東京新聞論説委員の長谷川幸洋による、鳩山政権失脚までの裏事情。ある財務官僚からかかってきた一本の電話から始まるサスペンスフルな展開がおもしろいのなんの。だが、既得権益派の官僚たちに鳩山元首相らがからめとられていく様は、決して愉快なものではない。国民の見えぬところで、国民の手の届かぬ権力者たちに、国民の代表がつぶされる。その具体的手法とプロセスを明らかにした著者の功績は大きい。悪い意味での政権交代が、鳩山が辞任した時にも起きていたわけだ。今回新たな政権が生まれたとしても、きっと同じ手法で骨抜きにされることだろう(と、ここでまた予言)。
『オバマ+コノリーvsティーパーティー』は、同じ選挙でも米国の話。オバマ陣営の草の根運動と、共和党の支持組織ティーパーティーの双方に潜入調査した著者による生々しい体験談だ。オバマ側のマニュアルにある、当日絶対投票にいかせる説得のアイデアなどは、日本の候補者たちもすぐ流用できるのでは? もう遅いか。
『プーチン 最後の聖戦』は、世界最強の指導者のひとりプーチン・ロシア大統領の生い立ちから権力基盤、今後の世界戦略まで記した分析書の決定版。ドル暴落により米国にとどめを刺すのだという。そういえば先日プーチンは、FRBの金塊貯蔵庫に金が無い事を暴露したIMF専務理事の失脚は米国の陰謀だと堂々と発表していた。米国の一番痛いところを容赦なくつく強者プーチン。我が国の衆院選にも立候補してくれないものか。
前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテイメント”をテレビ等で展開中。
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※本記事は週刊アスキー1月8日・15日合併号(12月25日発売)の記事を転載したものです。
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