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【私のハマった3冊】なかなか表に出ない仕事人の努力を垣間見る

2012年10月30日 13時00分更新

私のハマった3冊

プロフェッショナルな修理
著 足立紀尚
中公文庫
740円

ふむふむ おしえて、お仕事!
著 三浦しをん
新潮社
1365円

すき焼き SUKIYAKI
著 松本栄文
カザン
3800円

 世の中には様々な職業があるが、一人の人間が就ける職業の数は限られている。だからこそ、私は自分の知らない職業に出会える本を読みたくなる。

 高校野球の球児たちに感動するのは、白球を懸命に追う彼らの向こうに、日々の過酷な練習が思い浮かぶからでもあるだろう。

 仕事も一緒だ。これはと思うモノや人に出会うと、才能だけではなく長年の努力の積み重ねが見えてくるから感服するのだ。

 なかなか表に出ない仕事人の努力を垣間見ることのできるのが『プロフェッショナルな修理』

 新しく買う方が安い場合が多い現在、お気に入りのモノを修理しながら大切に使うのは、贅沢となってしまった。どんなプロセスを経てモノが再生されるのか、修理に関わる職人の仕事ぶりを子細に見ていくことで、彼らの努力が浮き彫りになる。修理とはこんなにも奥が深く、厳しい水準が求められるのかと、思わずほぉっとため息が漏れる。

 自分の好きなことなら努力を惜しまないが、それを仕事に結び付けるのはなかなか難しい。『ふむふむ おしえて、お仕事!』で登場する16人の女性たちは、紆余曲折しながらも好きなことを仕事にしているからだろうか、皆さん凛とした美しさが感じられ、大変魅力的だ。

 本の中でなら一流の仕事人にも気軽に出会うことができる。『すき焼き』は、“てるよし”という名の特産松阪牛が、肥育家始め、肉職人や焼き子さんまでたくさんの“手”によってすき焼きになる話が中心に書かれている。うっとりするような写真が多数掲載されていて、登場する方だけでなくこの本に携わった方々の仕事への姿勢が映し出された極上の逸品といえる。

 真剣な眼差しで仕事に向き合う人は美しい。そんな彼らの横顔に汗が一筋たらーっと流れようものなら、性別関係なく「惚れてまうやろ!」と叫び出したくなる。そんな人に出会いたい。そしていつか自分もそんな人になりたい。

はにぃ
趣味はダンスと読書。欲しいのは食べても太らないカラダ。書評コミュニティー『本が好き!』レビュアー。

※本記事は週刊アスキー11月13日号(10月30日発売)の記事を転載したものです。

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