週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

【私のハマった3冊】タツノコプロ、スタジオ・ゼロ、ぴえろ、アニメ制作会社の物語

2014年02月01日 10時00分更新

wambook

クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?
著 布川郁司
日経BP社
1680円

世界の子供たちに夢を
タツノコプロ創始者 天才・吉田竜夫の軌跡

著 但馬オサム
メディアックス
1575円

ゼロの肖像
「トキワ荘」から生まれたアニメ会社の物語

著 幸森軍也
講談社
1785円

 

 日本のアニメーションは相変わらず隆盛だが、その発展の礎になった人々にまつわる書籍は必ずしも多くはない。そんな中、話題を呼んでいるのが、アニメ制作会社ぴえろの社長・布川郁司の『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?』だ。版元が日経BPということもあり、ビジネス書としても読める作りになっている。

 布川はタツノコプロで『タイムボカン』シリーズなどに携わった後、独立してぴえろを設立。『うる星やつら』、『魔法の天使クリィミーマミ』とヒット作を連発した。近年は『BLEACH』、『NARUTO』などのメガヒットを生み出している。

 布川の目標は“良い作品を作ること”とともに“収益をあげて会社を存続させていくこと”だった。アニメ制作会社として初めてライツビジネスを手がけたのも、その施策のひとつ。また、日本初のOVA(オリジナルビデオアニメ)を作り、ソフトの売り上げをベースにした現在も続くビジネスモデルを作り上げた。若手だった押井守監督を抜擢するなど、人材育成にも手腕を発揮している。

 但馬オサム『世界の子供たちに夢を』は、『科学忍者隊ガッチャマン』など数々の名作を生み出したタツノコプロ創始者・吉田竜夫の評伝。今では当たり前になっているアニメの分業制も吉田の発明だ。幸森軍也『ゼロの肖像 「トキワ荘」から生まれたアニメ会社の物語』は、藤子・F・不二雄、藤子不二雄(A)、石ノ森章太郎、赤塚不二夫らが立ち上げたアニメ会社スタジオ・ゼロの足跡を追ったノンフィクション。手作り感満載のアニメ制作の様子に驚かされる。

 斬新なアイデアと膨大な労力を費やして新たなビジネスを作り上げていった若者たちの物語という点で、昭和のアニメ制作会社の物語は、ガレージから出発したシリコンバレーの起業家たちの物語とよく似ている。アニメファンならずとも目を向けてほしい分野だ。
 

大山くまお
フリーライター・編集。近刊に『中日ドラゴンズあるある2』など。今年は久々に名言集も作る予定です。

※本記事は週刊アスキー2/11号(1月28日発売)の記事を転載したものです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります