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【私のハマった3冊】かつてあった風景を想像しながら東京をぶらぶら歩いてみる

2013年11月23日 14時00分更新

wambook

地形を楽しむ
東京「暗渠」散歩

著 本田創
洋泉社
2520円

古今東西 風俗散歩
著 風きよし
トランスワールドジャパン
1680円

帝都の事件を歩く
著 森まゆみ、中島岳志
亜紀書房
1890円

 2020年の東京オリンピック開催が決定した。これは今の街並みがあと7年で再び大きく変わっていくことを意味する。

 1964年の東京オリンピック前には、かつて東京の山の手から武蔵野台地にかけて無数にあった中小の河川が一気に蓋をされて“暗渠(あんきょ)”になった。暗渠とは、かつて川が流れていた痕跡のことだ。本田創『東京「暗渠」散歩』は、その名のとおり東京にある主な暗渠を、豊富なカラー写真とともに案内する一冊だ。

 暗渠を探して歩くポイントは、低くなっている谷筋を見つけること。ひときわ曲がりくねった道は、暗渠であることが多い。5章の“石神井川支流の暗渠”には、筆者の散歩コース“谷田川・藍染川”の暗渠が紹介されている。ソメイヨシノの故郷である染井霊園のあたりを水源とした川で、豊島区、北区、文京区、荒川区、台東区などの区の境目を流れ、上野の不忍池に注いでいた。“谷根千”の賑やかなよみせ通りや個性的な店が多い根津のへび道も暗渠である。かつてあった風景を想像しながら、2~3時間ぶらぶら歩くのがとても楽しい。

 谷田川・藍染川の暗渠と交差する駒込周辺の住宅地は、かつて“駒込神明街”と呼ばれる花街だった。このような遊郭跡を詳細に記録したブログをコンパクトな形でまとめた本が、風きよし『古今東西 風俗散歩』だ。“浅草十二階下”に代表される明治期の私娼街からトルコ風呂発祥の地など、日本全国を“風俗”という切り口で歩く。かつて千駄ヶ谷にあった連れ込み旅館街は、やはり東京オリンピックを契機に消滅したという。

 森まゆみ・中島岳志『帝都の事件を歩く』は、日本の近代史を研究する中島が作家の森の案内で、テロやクーデターなどが起こっていた戦前の不穏な東京の痕跡を探る風変わりな街歩き本。ちなみに、第一章で2人が歩く本郷の菊坂下には、東大下水(ひがしおおげすい)の暗渠がある。
 

大山くまお
ライター・編集・中日ドラゴンズファン。TBSラジオ『荻上チキ・Session22』の落合特集に出演。

※本記事は週刊アスキー12/3号(11月19日発売)の記事を転載したものです。

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