今こそ読みたいマクルーハン
著 小林啓倫
マイナビ新書
1058円
20世紀エディトリアル・オデッセイ
著 赤田祐一、ばるぼら
誠文堂新光社
2700円
小豆島にみる日本の未来のつくり方
編著 椿昇、原田祐馬、多田智美
誠文堂新光社
2160円
新しく現われた技術が将来的に何をもたらすのか、予測するのは難しい。「我々はバックミラーを通して現代を見ている。我々は未来に向かって、後ろ向きに進んでゆく」とはカナダのメディア論の大家、マーシャル・マクルーハンの言葉だ。所詮、人間は未来を過去との比較や類推でしか語ることができない、というわけである。たとえば自動車の登場当初、大半の人は“馬なし馬車”というイメージでしか認識できなかったらしい。
小林啓倫『今こそ読みたいマクルーハン』ではほかにも、メディアや文明の未来を示唆したマクルーハンの言葉が多数とりあげられる。著者はそれらを参照しながら現代のさまざまな事象をとらえ、将来への指針を見出そうとしている。
マクルーハンは編集者から「あなたの素材の75パーセントが新しい。本として当たるためには10パーセント以上新しいことがあるようではいけない」と言われたことがあるという。赤田祐一・ばるぼら『20世紀エディトリアル・オデッセイ』でとりあげられた多くの雑誌も、マクルーハンの本と同様、いまなお新しさに満ちている。『ホール・アース・カタログ』などは、40年以上も前に現在のネット社会を予見した雑誌として、近年再評価が著しい。
本書のカバーには観覧車の図版が使われている。これは'70年代の伝説の雑誌『ワンダーランド』第2号の表紙を飾ったもの。著者の一人・赤田は以前ある雑誌で、この観覧車から一種のコミュニティーのようなものを想像したと語っていた。
香川県小豆島の各所には、ヤノベケンジの巨大オブジェが地域コミュニティーの再生を象徴するように点在する。『小豆島にみる日本の未来のつくり方』は、瀬戸内国際芸術祭を契機にアーティストらと島民が交流し、そこから新たなコミュニティーが立ち上がる過程を追う。地方の疲弊など現代日本の抱える問題を克服するモデルとして、小豆島を据えたのがユニークだ。
近藤正高
ライター。ウェブサイト『cakes』でタモリを通して戦後史をたどる『タモリの地図』を連載中。
※本記事は週刊アスキー7/8号(6月24日発売)の記事を転載したものです。
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