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【私のハマった3冊】決して軽い小説じゃない いい大人が読みたいラノベ3冊

2015年02月21日 13時00分更新

1017BOOK

さよならを待つふたりのために
著 ジョン・グリーン
岩波書店
1944円

知らない映画のサントラを聴く
著 竹宮ゆゆこ
新潮文庫
680円

ハケンアニメ!
著 辻村深月
マガジンハウス
1728円

 

“ラノベ”を軽い小説だと思っている人は、“けいおん”を軽い音楽だと思ってる人くらい微笑ましい。時折「いい大人がラノベなんて」と難癖つける方がいらっしゃるが、どんな本を読んでいらっしゃるか、わたし、気になります! おそらく、剣と魔法と俺様無双を、萌えアニメ的パッケージに入れたという理解でしかないのかも。そんな定型をずらしていく作品を選んだ。

 最初はラノベの原型、ヤングアダルト胸熱必至の『さよならを待つふたりのために』。骨肉腫で片脚を失った17歳の少年と、甲状腺がんの進行を薬で抑えている16歳の少女のラブストーリーだ。自分の死を悲しむ人はできるだけ少ないほうがいいと考える彼女と、自分が生きた証をできるだけ残したいと願う彼。対照的なふたりの生々しい恋は、“なぜ生きる”かという問いを読み手につきつける。ありがちな感動ポルノを期待すると、まるで違うところに連れてかれるぞ。

『知らない映画のサントラを聴く』を読むと、人生に嘘が必要な理由がわかる。ありのままの現実と向き合ったら、そのシビアさに痺(しび)れるから。辛すぎる現実を引き受けるため、自分で自分に嘘をつく。恋愛小説として読めればいいのだが、登場人物がどんな過去を嘘として呑み込もうとしていたかを知った瞬間、愕然(がくぜん)とする。残りの人生を罰ゲームにしないための、足掻(あが)き・もがきが強烈だ。ライトノベルじゃないことを強調しているが、これはキャラクターの強さが魅力的な、キャラノベだ。

『ハケンアニメ!』は、アニメ業界の理想と現実を、そこで働く三人の女性の視点から描いた連作短編集。良いアニメは、愛と技術と〆切を燃料にしてできていることを"発見"するだろう。特殊な業界のリアルを見せながら、サラリーマンあるあるを語るところなんて、城山三郎や堺屋太一のサラリーマン小説を思い出す。かつて大衆文学というくくりがあったが、襲名するのはラノベだね。
 

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー3/3号(2月17日発売)の記事を転載したものです。

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