くまみこ 2
著 吉元ますめ
KADOKAWA/メディアファクトリー
596円
しろくまカフェ
著 ヒガアロハ
小学館
700円
羆嵐
著 吉村昭
新潮文庫
529円
テディベアにプーさん、クマと言えばマスコットの定番だ。リラックマにデッドベア。ご当地キャラのメロン熊にくまモン。『艦これ』の球磨、三隈、阿武隈、熊野……は違うか。ともかく地上最強説まである大型猛獣なのに、なぜクマはここまで私たちを惹きつけるのか。
そんなクマ界期待の新星が、吉元ますめ『くまみこ』である。東北の寒村で巫女の中学生まちと一緒に暮らす、しゃべるクマのナツ。だが突然、まちが都会に進学すると言い出した。かくてナツは、ユニクロに着ていく服もない田舎娘に都会で暮らすための試練を課す。いや、そんな娘をヴィレッジヴァンガードに行かすのはハードル高すぎと思いますが。とにかくナツの保護者視点に自然に同一化させられ、世間知らずなまちが無性に愛らしく思えてくる。アイヌ風の巫女装束も超可愛い。読者的には、このまま山奥でふたり暮らしてほしいもの。
一方、街にだってクマはいる。ヒガアロハ『しろくまカフェ』は、タイトルどおりにシロクマが営むカフェが舞台。マスターがクマで客がパンダ。たったそれだけのことなのに、しょうもないダジャレにさえ、ゆるやかな余韻が生まれる。生き急ぎすぎる都会人にはクマの癒やしが足りない。そう、訴えかけてくる作品だ。たぶん。
だが、あまりに癒やされ過ぎて本物のクマの恐ろしさを忘れそうではいけない。そんな時は吉村昭『羆嵐』を読もう。大正4年、死者7名という北海道史上最悪の被害を出した熊害事件“三毛別羆事件”をもとに書かれた小説だ。雪に閉ざされた開拓村を300キロを超す巨大クマが執拗に襲う。人の味を憶えた熊に対し、村人はおろか、警察さえなす術を失った時、はぐれ者の老練猟師が立ち上がる……。無駄を廃した硬質の文体が極限の緊張感を伝える、凄まじいドキュメンタリーだ。
以上、記事に釣られて買っていただきたい、クマーな三冊だ。
前島賢
ライター。SF、ライトノベルを中心に活動。著書に『セカイ系とは何か』(星海社文庫)がある。
※本記事は週刊アスキー6/24号(6月10日発売)の記事を転載したものです。
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