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【私のハマった3冊】帰省する場所がない人も読みたい “上京”と“青春”の3冊

2014年05月05日 15時00分更新

978book

戦略的上京論
著 長谷川高
星海社新書
886円

横道世之介
著 吉田修一
文春文庫
771円

上京ものがたり
著 西原理恵子
小学館
843円

 GWや夏休みなど、まとまったお休みの前になると、友人たちの帰省の話に胸のあたりがチリチリと疼く。いわゆる東京生まれ、東京育ちの私にとって、帰省する場所はどこにもなく、ここしか居る場所がないからだ。帰省に浮き足立つ友人たちの会話に、原風景への憧憬がふくらみ、ジェラスなんかを感じちゃう今日この頃である。

 縁あって読んだ『戦略的上京論』は、上京してきた人にエールを贈る一冊だ。東京での処し方、楽しみ方、人と出会う方法を自然なことと振る舞う東京出身者を“シード校”ととらえ、“ノーシード”すなわち、地方出身者がどのように過ごせば“この大都会、東京を味わい尽くことが出来るのか?”と、そんなテクニックや考え方のヒントを綴った上京指南の書なのだ。

 友人たちにこの本の話しをしたところ、薦められたのが吉田修一の『横道世之介』。なるほど、『戦略的上京論』を物語で読むかのような内容である。大学進学のため長崎から上京してきたばかりの主人公、横道世之介の一年間を切り取った、キラキラと輝く青春小説だ。年齢は問わないが、ここ東京で青春真っ盛りの人には、是非とも、この2冊、セットで読んでいただきたい作品だと思う。

『上京ものがたり』は、高知から美大へ通うために上京してきた女の子の成長を描いたコミックエッセイ。著者のサイバラ自身の上京物語といっても過言ではありません。大好きな絵を続けながら、何者かになりたくて、悪戦苦闘しながら、夢を追う主人公。諦めないことの素晴らしさを教えてくれる作品です。

 考えてみたら、“上京”と“青春”は似ているのかもしれない。どちらも、真っ最中においては、しんどくて、不安。でも、だからこそ、その暗がりで見つけた希望の光は燦然と輝きを放つのだろう。そう考えると、故郷に「ただいま」と帰ることの幸福を知らないものとしては、やっぱり、羨ましさがつのるのです。
 

奥村知花
成城大学卒。“本しゃべりすと”として、新刊書籍のパブリシティに携わりつつ、書評エッセイなど執筆。

※本記事は週刊アスキー5/13-20号(4月28日発売)の記事を転載したものです。

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