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【私のハマった3冊】巨大企業が台頭する“帝国”の時代を生き抜くヒント

2013年09月21日 14時00分更新

947BOOK

(株)貧困大国アメリカ
著 堤未果
岩波新書
798円

レイヤー化する世界
著 佐々木俊尚
NHK出版新書
861円

そうだったのか! 中国
著 池上彰
集英社文庫
760円

 20世紀は“国民国家”の時代だった。そこでは資本主義と民主主義で豊かさと権利を得た中産階級が主役だったが、21世紀になると、政治と経済の混乱により国民国家は力を失った。

 代わって台頭してきたのは、情報とコミュニケーションを支配するアップルやグーグルやマイクロソフト、低価格な日用品を市場にあふれさせたウォルマート、加工食品のネスレ、一般消費財のP&Gなど、利益と効率を追求する巨大多国籍企業だ。

 巨大企業の台頭には良い面と悪い面がある。市場には安くて品質の高い製品が供給され、日々生活は便利で刺激的になっている。その一方で世界的な規模で効率化が追求された結果、先進国では中産階級が職を失い経済が空洞化した。途上国に流れた富も均等には分配されず、全世界的に貧富の格差が拡大した。

 現在の世界を実質的に支配しているこれらの巨大企業は、国境や民族の枠を超えるという良い意味でも、多くの人を低賃金労働に追いやって莫大な利益を独占するという悪い意味でも“帝国”に例えられる。

 主に帝国の悪い面に注目し、大企業に政治もマスコミも牛耳られるようになった米国の状況をリポートしたのが『(株)貧困大国アメリカ』だ。遺伝子組み換え作物の特許を振りかざして、イラクやアルゼンチンの農民まで農奴化した米モンサント社の戦略には背筋が寒くなる。

 こんな時代をどうやって生きていけばいいのか。それに対するひとつの答えを示したのが『レイヤー化する世界』。国民国家の成立の歴史を丁寧に追うことで、国民国家は人類史上の一時的な現象に過ぎないと解き明かし、個人は帝国が提供するメリットを使いこなす共犯者として生きることを提案している。

 巨大企業だけでなく、急成長して覇権を求めはじめた巨大独裁国家・中国もまた新たな時代の帝国だ。『そうだったのか! 中国』は、現代史を背景に中国の行動原理を解き明かしている。

 

根岸智幸
電子書籍『ミニッツブック』(外部サイト)やってます。

※本記事は週刊アスキー10/1号(9月17日発売)の記事を転載したものです。

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