エキストラバージンの嘘と真実
著 トム・ミューラー
日経BP社
1890円
日本の「食」は安すぎる
著 山本謙治
講談社+α新書
840円
彼の家に作りに行きたい!
純愛ごはん
著 オガワチエコ
セブン&アイ出版
980円
世の中はある意味、誤解で成り立っている。“不都合な真実”は知らないままの方が幸せ、なのかもしれない。
そんなことを『エキストラバージンの嘘と真実』を読んで思った。全米にショックを与えたベストセラー告発本だが、イタリアのジャーナリストが徹底取材したオリーブオイル業界の実態は想像を絶するレベル。たとえば世界一厳しいEU表示規制がありながら、オーガニック表記はデタラメ。スペイン産の低級オイルを輸入して瓶詰めしただけでイタリア産と表示したり、ひどいものは大豆油に香りづけしたものを平然と“エキストラバージン”表記したりともう滅茶苦茶。絶望的なのは、日本でも見かけるような大手メーカーも素知らぬ顔でそれらを売っているということだ。実際、海外のスーパーでイタリア産を買い集めて調べたら、31種類中、本物は1種類だけ。さらに半数以上は食用に不適な“ランプ燃料用”グレードだったという。もはや、偽装食品界の世界チャンピオン・中国と肩を並べるレベルだが、幸い本書には“本物”の選び方が書いてあり助かる。
『日本の「食」は安すぎる』も同じく食品業界の裏側暴露本だが、日本限定の話題なのでよりリアル。野菜に豚肉、卵に牛乳、そして弁当。安物と本物は何が違うのかが書いてある。読んだらもう安い食べ物は買えないかも、とくにハム……。
あまり怖い話ばかりじゃアレなので、最後は彼氏をメロメロにさせるレシピ集『純愛ごはん』。包丁も材料も無くてもわずか数分間で作れる家庭料理の数々にはびっくり。恋愛巧者の元美人ホステスによる本だが、どんな貧相なキッチンでも作ってやるぞ的な、闘争心すら感じさせる力作であった。簡単な上に男ウケするメニューばかりなので、料理が苦手な男性が買っても意外とよさそうだ。“彼の家に作りにいきたい!”とのスイーツな副題が、誰かに見られたとき誤解を生むかもだが。
前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った"批評エンタテイメント"をテレビ等で展開中。
※本記事は週刊アスキー8/6号(7月23日発売)の記事を転載したものです。
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