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【私のハマった3冊】寅さん、野原ひろし、たけし 時代の空気を映す名言集

2014年06月21日 18時00分更新

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寅さんのことば
風の吹くまま 気の向くまま

著 佐藤利明
東京新聞出版局
1728円

野原ひろしの名言
「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方

著 大山くまお
双葉社
1080円

たけし金言集
あるいは資料として現代北野武秘語録

著 アル北郷
徳間書店
1080円
 

 僕は名言に関する仕事の関係で、書店に並んでいる多種多様な名言集を手にすることが多い。なかでも特定の人物やキャラクターに関する名言集は、どこか時代の空気を映していて興味深い。

 佐藤利明『寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま』は、ご存知『男はつらいよ』のフーテンの寅次郎の名言集。たとえば、寅さんが旅に出る理由はこうだ。「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ」。うーん、カッコいい。そして寅さんは旅先から故郷と家族を想う。「ああ、やっぱり家がいちばんいいや」。

『男はつらいよ』は、佐藤の言葉によると「放浪者と定住者の物語」なのだという。物語の中では妹のさくらたちが“定住者”だが、今の50代より上の世代とおぼしき当時の観客も定住者だった。終身雇用制度のもとでサラリーマンとして家族を養い続けた人々は、寅さんのように自由気ままに生きてみたいと憧れたのだろう。だからこそ寅さんは時代のヒーローになったのだ。

 大山くまお『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』は、しんのすけの父・ひろしの名言集だ。サラリーマンとして一家を養うひろしは、寅さんとは真逆のマイホームパパ。「オレの人生はつまらなくなんかない! 家族がいる幸せを、あんたたちにも分けてあげたいぐらいだぜ!」と啖呵(たんか)を切るぐらい家族に愛情を注ぐ男だ。ひろしの名言は10代や20代の若者たちから圧倒的な支持を受ける。将来、職や家族を持てない“放浪者”になりかねない彼らにとって、ひろしは憧れのヒーローなのだろう。

 アル北郷『たけし金言集 あるいは資料として現代北野武秘語録』は、ビートたけしの弟子が直接側(そば)で聞いた名言集。建前だらけの時代を切り裂いてきた言葉の切れ味は健在だ。「おい、誰だよ! きったねーな! 便器にうんこがこびりついてるじゃねーかっ!」。やっぱり、たけしはすごい。
 

大山くまお
ライター・編集。本文でも紹介させていただいた『野原ひろしの名言』(双葉社)、おかげさまで3刷出来!

※本記事は週刊アスキー7/1号(6月17日発売)の記事を転載したものです。

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