パーツのぱ 10
著 藤堂あきと
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
864円
かびんのつま 1
著 あきやまひでき
小学館
596円
インテリやくざ文さん
著 和泉晴紀
鉄人社
1296円
アスキー読者には今さらながら、『パーツのぱ』が完結した。率直にいって、ぼくはパーツには何の関心ももっていない。しかし、このマンガをぼくは10巻まですべて買いそろえ、しかもかなり読み返す頻度の高いマンガである(ちなみに、うちの7歳の娘もよく読む)。
ひと言でいえば、働いている様子が楽しそうだからだろう。パーツショップの日常を描いた“だけ”のこのマンガには、小売・卸・メーカーの普遍的な関係がそろい、発注ミスに慌て、クレーマーに手を焼き、ライバル店と競い合うという、ぼくたちの労働風景そのものがそこにある。それを辛さやリアルさではなく、楽しさのうちに描くことが抜群によくできている作品なのだ。
次に紹介するのは『かびんのつま』という作品。化学物質過敏症の妻の話なのだが、作者の妻(および自分)の“実体験”として描かれている。妻の症状は化学物質だけでなく、光や電磁波などにも現われるという。
はっきりいえば、ぼくは妻の愁訴を信じていない。正確にいえば“ある程度は本当かもしれないのだが、気のせいの部分も多分にあるのではないか”といったところである。
妻が自分の感じている“化学物質や電磁波に攻撃されるイメージ”を可視化した絵が随所に出てきて、クラクラする。
信じる信じないはあなたの判断。そのような世界をのぞく好奇心で本書を読むことをおすすめする。
最後は、『インテリやくざ文さん』。本編のどこにも主人公が“インテリやくざ”であるという設定はないが、タイトルがそうなんだから、そうなのだろう。そんな修羅な男のはずだが、毎回考えることはセコい。“電車で座った対面の女性のスカートの中がチラ見できるように自然に座る方法”とか、どうしても“アガリ(お茶)”という符牒(ふちょう)が寿司屋で言えないとか……。
めまいのするセコさだ。堪能してほしい。
紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。
※本記事は週刊アスキー10/7号(9月23日発売)の記事を転載したものです。
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