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【私のハマった3冊】普通の人の感性を重視した藤子・F・不二雄が説く仕事術

2014年09月13日 18時00分更新

995BOOK

藤子・F・不二雄の発想術
編 ドラえもんルーム
小学館新書
756円

藤子・F・不二雄
著 筑摩書房編集部
筑摩書房
1296円

Fライフ 2号
監 藤子プロ
小学館
1080円
 

 映画『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒット中だ。興行収入はすでに50億円を突破したという。35年来のファンとして映画の出来に言いたいことはたくさんあるが、とりもなおさず『ドラえもん』という作品と原作者、藤子・F・不二雄に注目が集まるのはとてもいいことだと思っている。

 ドラえもんルーム編『藤子・F・不二雄の発想術』は、F先生による膨大な発言をまとめた1冊。前半はまんが家としての人生、後半は“まんが論”、“仕事術”などがF先生自身の言葉で語られる。たとえば、人気のあるまんがを描くためには、「まず最初に普通の人であれ」と説く。人気まんがは小手先のテクニックでは生まれない。まんが家として表現したい部分と、読者の求めるものが一致したときに生まれるものだ。だから、普通の人の感性が重要になる。F先生は規則正しい生活を自分に課して、きわめてまっとうな家庭人、普通人であろうとした。ただし、普通の人ではまんがは描けないので、そこにプラスアルファ自分だけの世界が必要になる。F先生の場合、それは映画や恐竜への興味などだった。

 筑摩書房が新たに立ち上げた中高生向けの伝記シリーズ<ポルトレ>の第1回配本として、スティーブ・ジョブズらと並び『藤子・F・不二雄』が刊行されたことはファンとして大変嬉しい。内容は平易に読むことができるF先生の生涯だが、原稿を落としまくってまんが界から事実上追放されてしまった21歳のときと、劇画ブームの最中で「藤子不二雄の絵はもう古い」と揶揄された35歳のときの2度の大きな挫折に力点が置かれている。F先生は21歳の挫折以来、締切に遅れることはなかったそう。私も見習います……。

『Fライフ』は“藤子・F・不二雄生誕80周年記念マガジン”と銘打たれた総合ビジュアルマガジン。現在は2号が刊行されている。版元ならではの企画・編集力にはため息が漏れる。
 

大山くまお
フリーライター・編集。著書『野原ひろしの名言』(双葉社)売れてます。シンエイっ子です。

※本記事は週刊アスキー9/23号(9月9日発売)の記事を転載したものです。

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