「方言コスプレ」の時代
著 田中ゆかり
岩波書店
2940円
全国あいどるmap 2013-2014
著 全国あいどるmap製作委員会
エンターブレイン
1500円
必修科目 鷹の爪
著 内藤理恵子
プレビジョン
1300円
NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の劇中のお決まりのセリフ「じぇじぇじぇ」は、すっかり流行語となった。本来はドラマの舞台である岩手県三陸地方でもごく限られた地域で使われていた方言のようだが、いまや友人との会話やメールなどでこの語を使っているという人は全国にいるだろう。
このように、自分の気持ちなどを方言のイメージ(話し手自身が育った土地の方言とは無関係に)を借りて伝える行動に対し、“方言コスプレ”と名づけたのが、田中ゆかり『「方言コスプレ」の時代』だ。思えば、『あまちゃん』のヒロイン・天野アキは、東京で生まれ育ったにもかかわらず、母の故郷である三陸で“訛りすぎる海女”として注目された。これはまさに方言コスプレそのものではないか。
やがてアキは海女からご当地アイドルとなった。現実にも、『全国あいどるmap』で網羅されているように、日本各地に多くのアイドルが存在する。なかでも異色なのが、メンバー全員が群馬育ちの日系ブラジル人である、リンダⅢ世というグループだ。地方の工業都市には、グローバル化にともない、ブラジルから労働者が大勢移り住むようになったところも少なくない。リンダⅢ世はそんな背景から生まれたアイドルといえる。
内藤理恵子『必修科目 鷹の爪』は、島根在住のFROGMAN(蛙男)によるアニメ『秘密結社鷹の爪』をテキストに、グローバル化する世界と日本のさまざまな問題を語った本だ。内藤は、地方で何かおもしろいことをやってみたいと思っている人にとって、蛙男はロールモデルになる人物だと評している。
蛙男はまた、「島根は鳥取の左側です」という自虐コピーを発案したことでも知られる。こうした“笑えないリアルを笑いにする”センスがなければ、地方の現実は乗り切れないのかもしれない。そのヤケクソ感は、『あまちゃん』にも通じるところがありそうだ。
近藤正高
ライター。東京から郷里の愛知県に戻って4年。地方からどんなことを発信できるか、考える日々です。
※本記事は週刊アスキー9/3号(8月19日発売)の記事を転載したものです。
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