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【私のハマった3冊】神戸芸能社、渡辺プロ、ジャニーズ 戦後日本のショービジネスに学ぶ

2013年06月08日 15時00分更新

私のハマった3冊

実録小説 神戸芸能社
著 山平重樹
双葉文庫
750円

昭和のスター王国を築いた男 渡辺晋物語
著 野地秩嘉
マガジンハウス
1680円

ジャニ研!
ジャニーズ文化論

著 大谷能生、速水健朗、矢野利裕
原書房
1680円

 握手会などのイベントを利用したAKB48や、インディーズ流通を活用するゴールデンボンバーなど、エンタテインメントの世界では次々と新しいカルチャーとビジネスモデルが生まれている。そこで今回は、戦後日本のショービジネスを時代ごとに振り返る3冊を紹介したい。

 まずは『実録小説 神戸芸能社』。終戦直後から日本のショービジネスの基礎を築いたと言われるのが山口組三代目組長・田岡一雄率いる神戸芸能社だ。代表的な所属スターは美空ひばり、日本初のスタジアムコンサートを開いたのも神戸芸能社である。田岡の人格者ぶりと山口組の威光があいまって、戦後の混乱のさなかにあった興行界をクリーンに制覇していった様子が実録小説の形で描かれる。

『昭和のスター王国を築いた男 渡辺晋物語』は、昭和30年代から50年代にかけて、ザ・ピーナッツ、クレージーキャッツ、ザ・タイガースらを擁して芸能界を席巻した渡辺プロダクション社長・渡辺晋の一代記である。渡辺プロの特筆すべき点は、タレントのマネジメントのみならず、テレビ番組やレコードの制作まで自社で行なっていたことだ。それまでの興行ビジネスを近代的な権利ビジネスに変えた人物として、本書ではつんく♂や秋元康らが渡辺に対して惜しみない賛辞を送っている。

 昭和……というより1980年代から現代に至るまで隆盛を誇っているのがジャニーズ事務所。『ジャニ研!』はジャニーズが生み出した文化を、楽曲の音楽的な背景、コンサート、マーケティング、タイアップなど、様々な切り口で解析していく。日系2世のアメリカ人・ジャニー喜多川=ジョン・H・キタガワが目指しているのは、テレビやCDの売り上げなどではなく、ミュージカルなどの総合芸術だというのがこの本のテーマ。

 田岡一雄、渡辺晋、ジャニー喜多川という3人の名プロデューサーたちから学ぶことは、まだまだ多いんじゃないかと思う。

大山くまお
ライター&編集。著書に『名言力』、『中日ドラゴンズあるある』など。インタビュー仕事も多数あり。

※本記事は週刊アスキー6/18号(6月4日発売)の記事を転載したものです。

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