いつも上を向いて
著 マイケル・J・フォックス
SBクリエイティブ
1728円
節ネット、はじめました。
著 石徹白未亜
CCCメディアハウス
1512円
新しい国へ
美しい国へ 完全版
著 安倍晋三
文春新書
864円
懐かし映画をリクエスト上映するサービスが流行中で、10月18日からは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』('85年、米)が再上映される。時間旅行ものの金字塔たる本作を懐かしみつつ、主演マイケル・J・フォックスの自伝『いつも上を向いて』を再読した。
製作・主演『スピン・シティ』が米ドラマ界で成功の証とされる100話を目前に、パーキンソン病の進行で直立すらできぬ状況に追い込まれるプロローグから一気読み。はたから見れば転落人生を、ユーモアたっぷりに語る究極のポジティブ本だ。
代表作『ファミリー・タイズ』の恋人役で知り合った妻トレイシー・ポランをはじめ、周囲への感謝の言葉にあふれる本書最大の見せ場は9・11事件当日、LAにいたマイケルがNYの妻子を案じて青ざめる場面。時折呼んでいた、気のいい中年の運転手が、誰に頼まれもしないのにマイケルの子供を学校に迎えに行き、妻のもとに送り届けていた事実が明らかになるくだりは、支えあいの彼の人生を象徴するようで、読んでいるだけで涙が出る。
時間は戻せないが作ることはできると語るのが『節ネット、はじめました。』。ウェブサイトを黒(見て後悔するもの)、白(役立つもの)、無害(仕事に必須)と分け、黒からリストラするハウツー本。ネット中毒の著者の実体験、たとえば黒サイトの筆頭Facebookで友人のリア充ぶりに落胆したり、何の役にも立たぬ掲示板まとめを数時間読み込み猛烈に後悔するなど、思わず「あるある!」と爆笑だ。
『新しい国へ 美しい国へ 完全版』は、おなじみ我が国首相の大ヒット本。政治家本らしく美辞麗句のオンパレードだが、’06年版とほぼ同じ内容を読み直すと、やっていることとの落差に仰天。大増税&年金・生活保護等々を削減しつつ「大切なのは、セーフティネットの存在」と書き上げるこの著者の尻を、誰かデロリアンで’06年に戻って蹴飛ばしてきてくれないものか。
前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテインメント”をテレビ等で展開中。
※本記事は週刊アスキー11/25号(10月14日発売)の記事を転載したものです。
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※Kindle版には付録が付いておりません |
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