日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉
著 田中秀臣
主婦の友社
1260円
カイジ「命より重い!」お金の話
著 木暮太一
サンマーク出版
1575円
海賊の経済学
見えざるフックの秘密
著 ピーター・T・リーソン
NTT出版
1995円
『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』の著者は、ネットでも人気、リフレ派経済学者の田中秀臣氏。アベノミクスで、リフレ派は大忙しなのに、なぜかAKB終焉を予言する本を刊行。グループアイドルは不況と縁が深いことに触れる。おニャン子クラブは、`85年の円高不況時に登場、モー娘。は、山一證券が破綻した`97年のデビュー。AKBのデビューは`05年だが、今の活躍はリーマンショックの`08年頃から。これに従うと、AKBはアベノミクスの景気浮上で消えていくというのが筆者の説。
不況とアイドルの関係。ここで導き出されるのは、アイドルと限界費用を巡る仮説である。テレビやネットといった無料のメディアを活用して話題づくりを行なうアイドルは、ほぼゼロに近い費用でどんどん情報が入ってくる。“限界費用”とは、“追加的な費用”のことだが、アイドルはまさに“限界費用ゼロ”の商品。だからこそ不況と親和性が高いというのだ。どっぷりはまった先はゼロ円でないのはご存じの通り。
『カイジ「命より重い!」お金の話』は『カイジ』を例にとりながら、借金や投資でだまされない“マネーリテラシー”を学ぼうという1冊。なぜ人は浪費するのか。ここで持ち出される経済学知識は“限界効用逓減の法則”。1杯目のビールはうまいが、2杯目以降はさほどでもない。飲み過ぎは、おいしくないし、浪費も回を重ねると反省しなくなる。限界効用逓減の法則を知っておけば、そんな失敗もなくなる、なんて簡単じゃないでしょ! ざわ……。
『海賊の経済学』は、海賊マニアの経済学者が書いた本。トップダウンの独裁社会かと思いきや、意外と民主主義だった昔の海賊の世界。海賊のインセンティブ(山分けとか)や海賊旗の経済学的意味など、いろいろおもしろい。
経済学の棚には、入門書や専門書ばかりでなく、文化と接続した経済本も増えつつある。翻訳だけでなく日本人もいっぱいこの手の本を書けばいいのに。
速水健朗
フリー編集者・ライター。主著『ラーメンと愛国』、『都市と消費とディズニーの夢』、共著『ジャニ研!』。
※本記事は週刊アスキー8/6増刊号(7月1日発売)の記事を転載したものです。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります