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iPadで昔懐かしカセット式4トラックMTR録音 ROLLY’s ロックの殿堂Vol.8

2012年11月30日 14時00分更新

文● 藤本健 撮影●岡田清孝 編集●相川真由美

 全国のFM放送系列であるJFN(JAPAN FM NETWORK)の番組でROLLYがパーソナリティーを務める『D.N.A.~ロックの殿堂~』。同番組内で展開している本誌コラボコーナー第8回の様子をお届けいたします。

20121103ROLLY01

 放送局によって放送日程は若干異なりますが、下記の放送局にて月に1度、第1週に放送しており、11月ぶんは3日から順次開始しております。

ネット局予定:FM秋田、FM新潟、FM富山、岐阜FM、Kiss FM、FM OSAKA、FM山陰、FM香川、FM徳島、FM長崎、FM大分、FM宮崎
※放送局、放送時間などは変更の可能性があります。詳しくは各放送局のHPをご覧ください。

 IPサイマルラジオ『radiko』でも聴取可能です(一部地域限定)。auのスマートフォン用アプリ『LISMO WAVE』、ドコモのスマートフォン用アプリ『ドコデモFM』なら全国で聴取いただけます。

 今回の放送で取り上げたのはTASCAM(ティアックのレコーディング機器ブランド)の『PORTASTUDIO』というiPad用アプリです。

 この名称に「おぅ!」と思った方は、結構いいお歳かもしれません……。これは1979年にティアックから発売された初のカセットテープMTR、『TEAC Portastudio 144』という製品から来ているモノ。実際にはその後継機であり、1984年に発売された『PORTA ONE』という製品をiPad用に再現したものです。私も当時PORTA ONEを購入し、今でも手元にあるのですが、比べてみてもよく似ていることが分かると思います。

ロックの殿堂08-01

 そもそもカセットテープMTRをご存知ない方のために簡単に説明しておきましょう。ご存知のとおり、カセットテープは片面でステレオ2chの録音再生ができ、両面で使えるアナログメディアです。これを規格外の使い方として片面4chの録音・再生ができるようにするとともに、2chと4chを再生しながら3chに録音する……といった使い方を可能にしたものがMTRです。このひとつのチャンネルをトラックと呼んでいて、複数トラックに録音できる機材だからマルチ・トラック・レコーダー=MTRと呼ぶのです。当時、業務用だったMTRは8トラックとか24トラックの録音が可能でしたが、オープンリールの太いテープを使うとともに、機材の価格も何百万円もするものでした。それを4トラックとはいえ手ごろなカセットテープで実現するとともに、安い価格で登場させた(PORTA ONEは当時の定価が9万8000円)というものでした。

ロックの殿堂08-03

 ROLLYさんも、高校生のころに、Portastudio 144を手に入れて、かなり使ったそうですが、100トラックでも200トラックでも使える現在のDAWと違い、たった4トラックしかないので、とにかくいろいろと工夫をして使ったのだとか。たとえば1トラック目にドラム、2トラック目にギター、3トラック目にベース、4トラック目にボーカルを入れたらそれで終了ですからね。ただ、当時ピンポンというワザがあり、1~3トラックを再生し、その音をそのまま4トラックへとダビングすることで、トラックを節約することができたのです。ですから、それをどういう手順でやると、いい音になるとか、ステレオで扱えるなど、いろいろと工夫したんですね。

 さて、このiPadアプリのPORTASTUDIOは、あえて当時の4トラックのMTRを再現したものであり、実際操作もPORTA ONEの実機とソックリ。録音すると、テープは回るし、巻き戻すとキュルキュルと音がする、といった具合。一瞬で巻き戻し可能なDAWから考えると、ちょっとイライラする面もありますが、それこそが昔懐かしいカセットテープデバイス、ということなんでしょう。ただし、このiPadアプリは1点さらに大きな制限があります。そう、ピンポンはサポートしていないので、本当に4トラックのみという形なのです。
 数日前に打ち合わせをした際、ROLLYさんから、ひとつ指令が降りました。その場(ラジオ収録)でドラムを入れるのは難しいから、1トラック目にスウィング感のあるドラムを入れてきてほしい、と。そこで、私の手元にあるループ素材を探し、それっぽいものを見つけるとともに、予め仕込んでおいたのです。聴いてもらうと分かるとおり4小節のリズムが繰り返し入っているというものですね。

 

ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源1

 そこからは、まさにぶっつけ本番で番組スタート。ROLLYさんも、このドラム気に入ってくれたようで、ノリノリの感じ。すぐに曲としてのイメージを膨らませているようでした。ここでROLLYさんが取り出してきたのは、ベース。家の奥にしまっておいたものを、わざわざもって来てくれたとのことでしたが、あまりお目にかかれないROLLYさんのベースプレーを間近で見ることができて、なかなか感激。

ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源2

 ここでROLLYさんから「これ、テープコンプレッションはかからないね(笑)」とのご指摘が。アナログのテープメディアの場合、レベルオーバーするほどの音量があっても、うまくまるめこんでくれるという特性があるのですが、残念ながらiPad版のPORTASTUDIOはそこまでを再現してくれているわけではないようで、レベルオーバーすると、クリップしてしまい、ノイズになってしまうため、一度録り直しをしています。
 ちなみに、この演奏は、ベースをヤマハのギターアンプ、THR10に接続して演奏したものを、iPadで録音しています。とはいえ、iPad内蔵のマイクだと音質的に厳しいので、TASCAMのiPad/iPhone用のマイク、iM2を接続し、これで録っています。なお、放送時はまだ新型のiPadの発売前だったので、第三世代のiPadを用いています。

 ベースとドラムがそろったので、今度は3トラック目にギターを録音。先ほどのアンプTHR10への接続をベースからギターに切り替えて準備完了。1~2分、試奏しながらフレーズを考えて、即レコーディング。さすがプロ、すごいですよね。一気に3トラックが完成しました。

ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源3

 ここで、4トラック目をどうするかを相談しました。そう、これが最終トラックになるわけですが、ボーカルを入れるのか、ボーカルを歌いながらさらに一緒にギターも弾いてしまうのか……。そこで行き着いた結論は、これはFMラジオ放送用なので、レコーディング自体はオケに留め、最後にオケを聴きながらROLLYさんが歌ってしまうのがいいだろう、と。というわけで、引き続き4トラック目にセカンドギターをレコーディングしました。ここで、改めて再生するわけですが、せっかく4トラックレコーディングができたので、そのままただ再生するだけでは面白くありません。  

 PORTASTUDIOにはPANという音を左右に振る機能がありますので、これを使ってみました。ドラムとベースはセンターに残したまま、最初にレコーディングしたギターを完全に左、セカンドギターは完全に右に振ったのです。さらに、ベースの音はやや低音をブーストするようにイコライザーで調整した結果が音源4です。だいぶ雰囲気が出てきましたよね。

ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源4

 いかがだったでしょうか? これだけの工程を10分強で行なえてしまうというのが、iPadの手軽さと、ROLLYさんの才能ということなんですよね。ここに掲載した音を聴くと、楽曲制作の流れもよく分かるので、勉強にもなるとのではないでしょうか?

 「手軽で分かりやすいのがいいですね。また制限があるからこそ、曲のイメージをつくってバンドメンバーに配るためのデモをつくるというのには、結構いいかもしれませんよ」とROLLYさん。昔のカセットテープMTRを懐かしく思う方、また当時の雰囲気を知りたいという方にもお勧めですよ。

ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源5

 感想など、ぜひROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。ROLLYさんのiPadレビューは週刊アスキー本誌にも掲載中です。次回以降もどうぞお楽しみに!

 

PORTASTUDIO
App Store価格:250円 (価格は記事作成時のものです)

AppStore アプリをダウンロード

●関連リンク
JFN『D.N.A.~ロックの殿堂~』

welcome to ROLLY net .com(ROLLY公式サイト)

藤本健の“DTMステーション”
 

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