前回の記事では、ROLLYさんの愛機であり、いつも連れ歩いている『TC-Helicon VoiceLive 2』(以下、VoiceLive 2)という機材の概要を紹介しました。VoiceLive 2はボーカル用のエフェクト・プロセッサーであり、非常に多機能であるのが特徴。前回は、ギターのコードに合わせて自分の声のハーモニーパートをリアルタイムに生成したり、エコー効果やリバーブ効果をつけたり、さらにはハーモニーをホールドさせることでバッキングコーラスを歌わせながら自分でメロディーを歌っていくワザなども紹介しました。
↑床(地面)に置いて足で踏んで操作する、ボーカル用のエフェクト・プロセッサー『TC-Helicon VoiceLive 2』。ROLLYさんがいつも連れ歩いている機材だ。 |
VoiceLive 2は、ROLLYさんが行なう数々のパフォーマンスにおいて重要な役割を担う機材だけに、バックアップ体制も万全だとか。「僕はTC-Heliconの機材を個人的に3台も持ってるんですよ。3台のうちの2台がVoiceLive 2で、1台はVoiceLive 3。VoiceLive 2で作ったプリセットはとっても重要なので、それぞれのマシンにコピーしています。VoiceLive 3にはギターエフェクトやアンプシミュレーター機能も入っていて便利なんだけど、通常はギターアンプで音を出すので、ステージなどで使っているのはVoiceLive 2のほうですね」とのことです。
さて、VoiceLive 2でできることは、前回記事で紹介したことだけではありません。さっそく、ROLLYさんならではのVoiceLive 2の使い方を披露してもらいました。
「あなたがもしグラムロッカーだったらね」と言いながら呼び出したのは、ROLLYさん自身が作成したVoiceLive 2用の“T REX”というプリセット。これをオンにして歌ってみると、確かにグラムロックっぽい歌声になるから不思議です。ここに“REVERB”スイッチをオンにすると、さらに広がった印象のサウンドへと進化していきます。でも、これ、何をどうやっているのでしょうか? ホントは機密事項なんだと思いますが、ROLLYさんがネタをバラしてくれました。
「これはね、1オクターブ上と1オクターブ下をちょっと入れることで、高い女性ボイスと低いバリトンが加わった感じに聞こえます。そこにさらに“DOUBLE”を加えてREVERBをオンにすると、まさにこのサウンドになるわけです」とのこと。そうやって解説を聞いてから、改めて歌ったときの効果を確かめていると「なるほど納得」という感じです。これを一発で呼び出せるからこそ、曲に合わせてすぐに利用できるわけですね。
さらにROLLYさんが「僕が作ったいちばんスゴいプリセット“QUEEN2”を紹介しましょう。これは怖いよ」と呼び出したサウンドには、度肝を抜かれます。ROLLYさんが1人で歌っているだけなのに、「まさにQUEEN!」という荘厳なあの雰囲気の歌声になるんですよね。このプリセットの秘密は細かくは教えてもらえませんでしたが、聴いた雰囲気からすると、やはりオクターブ上下の音だけでなく、もう1オクターブ高い音や、コードに合わせた3度、5度の歌声も混ぜたうえで、かなり深めなリバーブとエコーも入っていますよね。これをホールド機能によって発音させることで、QUEENみたいなサウンドになるんですね。
「子供のころからQUEENのようなステージがコーラスとともにできたらいいなと思っていました。でも、よっぽど上手くないと、QUEENのようなハモりはできないんですよ。でもVoiceLive 2があれば、それが実現してしまうという意味では夢の機材ですよね」とROLLYさん。「レコーディングであれば、自分の声を重ね録りすることによって、比較的容易にキレイなハーモニーを作ることができます。というのも、自分の声同士だからマッチするんですね。でも、ライブやバンドでのコーラスというのは自分の声同士というわけにはいきません。ではジョンとポールは別人なのに、なんであんなにビートルズのコーラスはキレイなのか。それはお互いがとても信頼し合って、お互いに無い部分を補い合い、音楽を感じ合っているからこそできる術なんです。心のつながりが大切であり、仲の悪い人同士ではコーラスは難しい。だからこそ、コーラスが上手いバンドはいいバンドなんですよ」と力説してくれます。でも、そんな仲のいい仲間、それ以前にそもそも仲間すらいなくても、キレイなハーモニーができちゃうのがVoiceLive 2というわけなんですね。
続いて、ROLLYさんが呼び出したオリジナルプリセットは“BEACHBOY HOLD”。効果が想像しやすいネーミングですね。歌ってみると、まさに想像したとおりの雰囲気を再現してくれました。VoiceLive 2があれば、こんなビーチ・ボーイズっぽいサウンドまで簡単に演出できてしまうんですね。この音色設定については、ROLLYさんから詳細は聞けていません。QUEEN2などとは違ってリバーブやディレイ、エコーなどが深めには使われていないようですが、裏声っぽく聞こえる高いハーモニーを中心にいくつかの音が混ざっていますね。このあたりにヒントがありそうです。
↑各音のバランス調整や各種パラーメーターの編集などは、本体のディスプレー上で行なえる。この作業を通して好みのサウンドを見つけていく。 |
もちろん、ROLLYさんの弾き方や歌い方があってこそ実現できたパフォーマンスであって、このプリセットが手に入ればだれでもビーチ・ボーイズっぽい曲が歌えるほど甘くはないと思いますが、夢が広がってきますよね。今後、ROLLYさんのステージを見る機会があれば、その歌声に注目してみてください。VoiceLive 2が活躍していることを確認できると思いますよ!
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。
『TC-Helicon VoiceLive 2』
●実売価格 5万2000円前後(記事作成時の価格です)
●TCグループ・ジャパン
●関連リンク
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