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【私のハマった3冊】徹夜を覚悟して読みたい新潮文庫の鉄板3冊

2012年07月16日 13時00分更新

私のハマった3冊

シャンタラム 上巻
著 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
新潮文庫
1040円

フェルマーの最終定理
著 サイモン・シン
新潮文庫
830円

ローマ人の物語 3―ハンニバル戦記〔上〕―
著 塩野七生
新潮文庫
380円

 オススメ本を熱く語り合う“スゴ本オフ”なるオフ会を主催している。そこで集まった鉄板本を紹介しよう。今回のテーマは“新潮文庫”、宝の山から3作に絞るのは不可能に近いが、「これよりおもしろいのがあったら教えてくれ」、「徹夜を覚悟して読め」という観点で選んだ。

 まずは『シャンタラム』。未読なら、おめでとう。憑かれたように読みふけり、時を忘れる夢中本に出会えたのだから(わたしは四回乗り過ごし、二度食事を忘れ、一晩完徹した)。この復讐と赦しの物語に匹敵する作品は、世界で一番おもしろい物語『モンテ・クリスト伯』ぐらいだ。前知識は邪魔、裏表紙の“あらすじ”も見ないで、波瀾万丈にダイブせよ。

 次は『フェルマーの最終定理』、生々しい感情たっぷりの、ゾクゾクずるほど人間くさい数学ドラマを堪能すべし。幾多の数学者をロマンと絶望に叩きこんできた この難問に関わる歴史をひもとくことは、そのまま人類にとっての数学を振り返ることになる。テーマとは裏腹に“お勉強”は皆無。難解なことは一切出てこないにもかかわらず、どのようなアプローチがとられ、どんな経緯をたどったかが鮮明に見える。

 最後は、『ハンニバル戦記』。『ローマ人の物語』は大著だが、おいしいところからツマミ食いしよう。これは“ローマvsカルタゴ”という国家対国家の話よりもむしろ、ローマ相手に10年間暴れまわったハンニバルの物語というべき。地形・気候・民族を考慮するだけでなく、地政学を知悉した戦争処理や、ローマの防衛システムそのものを切り崩していく手法に唸るべし。この名将が考える奇想天外(だが後知恵では合理的)な打ち手は、読んでいるこっちが応援したくなる。特筆すべきは戦場の描写、見てきたように書いてある。カンネーの戦いのくだ りでは、トリハダ全開になるだろう。

 新潮文庫の鉄板本、明日の予定がない夜にどうぞ。

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー6月5日号(5月22日発売)の記事を転載したものです。

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