【私のハマった3冊】仏教、キリスト教・ユダヤ教についてわかるコミック3冊
2015年02月14日 14時00分更新
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マンガで楽しむ旧約聖書
著 三笠加奈子
こう書房
1404円
お慕い申し上げます 1
著 朔ユキ蔵
集英社
607円
漫画・日本霊異記
著 ichida
メディアファクトリー新書
907円
風刺画、人質事件……イスラムについてのマンガを紹介しようと思ったが、やはりコミカライズが困難なうえに、“ハマった3冊”といえるほどのものはなかった。そこで、まず他の宗教を知ってほしいと思い、仏教やキリスト教・ユダヤ教についてわかる3冊を紹介する。
一つ目は、三笠加奈子『マンガで楽しむ旧約聖書』。日本人にはあまり知られていないが、ユダヤ教・キリスト教共通の聖典である『旧約聖書』のストーリーは実はイスラム教の聖典である『クルアーン(コーラン)』にも頻繁に登場する。話がおもしろいからだ。そしてマンガ化されたものも多い。その中でも本書は、まず手軽に全体像がわかる。かつ、愉快。アダムとイヴの話を描くときイヴのキャラ紹介に「テレビ通販でついつい買っちゃう性格」とか書くんじゃねーよ……。絵柄もかわいくて、うちの7歳の娘も、ハマって読んでいる。
二つ目は、朔ユキ蔵『お慕い申し上げます』。ライバルのせいで常に栄冠から遠ざけられ、人生に絶望している女性ランナーが寺にやってくる、という話。セックスを我慢できない副住職とか、僧侶に恋してしまう女性とか、俗なエピソード満載なのに、全体としては“執着からいかに解放されるか”という、かなりしっかりした仏教入門になっている。檀家の減少など現代の寺院をめぐるイザコザも興味深く描かれている。
三つ目はichida『漫画・日本霊異記』。奈良時代に編纂された説話集で、“良い行いには良い報い、悪い行いには悪い報い”という“因果応報”的な通俗仏教観(初期仏教から見ると完全に誤り)が詰まっている。日本人の道徳観や“自己責任”感覚の源泉といってもいい。村の“公衆便所”だった女とか、講話中に泣く赤ん坊を川に捨てさせた僧とか、変なエピソードだらけだ。それをとぼけた味わいの画風で定評のある作者がコミカライズした佳作である。
紙屋高雪
漫画評・書評サイト『紙屋研究所』管理人。著書に『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)。
※本記事は週刊アスキー2/24号(2月10日発売)の記事を転載したものです。
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