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【私のハマった3冊】生き方が芝居に出る俳優、高倉健 エッセイ、インタビューで偲ぶ

2015年01月30日 15時00分更新

wambook

あなたに褒められたくて
著 高倉健
集英社文庫
605円

高倉健インタヴューズ
文・構成 野地秩嘉
プレジデント社
1728円

東映任侠映画傑作DVDコレクション
デアゴスティーニ・ジャパン
899円
 

 昨年11月、日本を代表する俳優、高倉健が逝去した。83歳だった。書店の店頭では、高倉健に関連する書籍のフェアなどが行なわれている。特に本人によるエッセイ『あなたに褒められたくて』とインタビュー集『高倉健インタヴューズ』の2冊は、高倉健とは何だったのかを考えるのに恰好のテキストである。

『あなたに』は、健さんが生涯愛した旅で出会った人々との思い出や、記憶の断片について綴ったものだ。東映時代、後輩の大部屋俳優に馬用の下剤を飲ませたり、催眠術を使ってロケ隊の若者たちに恋人との肉体関係を告白させたりするなど、豪快かつひどいイタズラなども語られているが、何より印象に残るのが、旅先でふれあった人たちの優しさや清々しさ、想いの深さに対する感動を、健さんが本当に大切にしているところだ。

 健さんはアクション俳優としてデビューし、任侠映画で大スターとなった。東映退社後は『幸福の黄色いハンカチ』をはじめとした、庶民の生きざまを描く映画に出演するようになる。動から静へ、体のアクションから心のアクションへ。そんな感じだった。

『インタヴューズ』には、『単騎、千里を走る。』のチャン・イーモウ監督がこんな言葉を寄せている。「高倉さんがいちばん大切にしているのは、人の心の美しさを観客に届けることではないでしょうか」。『あなたに』は、人々の心の美しさを拾い集めて回った健さんのフィールドワーク集としても読むことができる。「生き方が芝居に出る」とは、とあるドキュメンタリーに出演したときの健さんの言葉だが、人に思いを馳せることのせつなさを体に染み込ませ続けたからこそ、健さんは黙って立っているだけで映画のような存在感を醸し出すことができたのだろう。

『東映任侠映画傑作DVDコレクション』は隔週刊行のDVDマガジン。『網走番外地』など、若くて溌剌としたアクションスター健さんの雄姿が楽しめる。

 

大山くまお
ライター・編集。拙著『野原ひろしの名言』(双葉社)が4刷になりました。ありがとうございます。

※本記事は週刊アスキー2/10号(1月27日発売)の記事を転載したものです。

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