iOS7とほぼ同時にリリースされた新『GarageBand』には、さまざまな機能が追加され、強力なアプリへと進化しています。その最大のポイントとも言えるのが“Inter-App Audio”への対応でしょう。Inter-App Audioとは、iOS7でサポートされた新しい仕組み。普通に使っているとまったく気付かないものですが、iOS上でのDTMに革命をもたらしたといっても過言ではないほど画期的なものなので、今回はそれを紹介していきましょう。
これまでのGarageBandもけっこう使ってきたROLLYさん。この新バージョンを最初に見たときは「画面を見る限り、これまでのGarageBandとあまり違いはないね」と言っていたのですが、「あれ、これは何だろう?」とすぐに核心部分に気付きます。画面上には「Inter-App Audio個のApp」と表示されており、明らかに日本語訳(?)がヘンな状況ですが、これは今までのバージョンにはなかったメニューです。
さっそく選んでみると、シンセアプリのアイコンがズラリと表示されます。実は、これらは私のiPadに入っているシンセアプリの一部なのですが、これこそがInter-App Audioに対応したアプリたちなのです。試しにひとつ選んでみると、GarageBand起動中だというのに、選んだシンセが起動して画面が切り替わってしまいます。これはどういうことかというと、GarageBandのひとつのトラックとして、Inter-App Audio対応のシンセアプリを利用できるようになっているのです。まさにPCの“DAW=Digital Audio Workstation”でいうところのプラグインのような感覚で利用できるわけですね。
いま起動したアプリは、日本人開発者bismarkさんによる『bismark bs-16i』というプレイバックサンプラー。ただ、通常の起動画面とはちょっと異なり、画面の右側に、GarageBandのアイコンと録音ボタンなどがありますよね。この録音ボタンを押すと、GarageBandのメトロノームが鳴り出します。ここでBS-16iをプレイすると、それがそのままGarageBandのトラックへとレコーディングされていくのです。ひと通り弾いてストップボタンをタップしたあと、GaregeBandアイコンをタップすることで、元に戻ることができます。従来は、GarageBandにあらかじめ搭載されている音源しか利用できませんでしたが、これによって使える音源をいくらでも増やしていくことができるというわけです。
もっとも今回は、ROLLYさんのギターをレコーディングしていくので、これらのシンセアプリを使うわけではありません。Inter-App Audioにはもうひとつ、ユニークな機能が搭載されているのです。それは先ほどのシンセアプリの一覧があった画面の一番上にある「エフェクト」を選ぶと登場してきます。
そう、その名の通り、エフェクトアプリを利用することも可能となっているのですが、実際選んでみると『AmpliTube for iPad』が登場してきます。私自身、今のところ、このアプリ以外にInter-App Audio対応のものがあることを確認できていませんが、これを選んでみると……。
「おや、これまでにも何度か使ったことのあるアンプシミュレータのアプリですね」とROLLYさん。その通り。この連載企画でも何度か登場したイタリアのIK Multimedia社によるギターアンプシミュレータです。ちょうど、同社の『iRig PRO』というLightning端子接続が可能なオーディオインターフェイスを持ってきたので、これをiPadに接続し、さらにROLLYさんのギターへとシールドで接続します。あとはROLLYさんにお任せということで、プリセットからさまざまなアンプ&エフェクトの組み合わせを探してもらって、いろいろと試してもらいました。
「これはいかにもMarshallのJCM800風なサウンドですね。こちらはFenderのTwinReverb風ですぞ……」と音色選びをひとしきり。「なかなかいいサウンドなんだけど、どれもリバーブが深く、音が遠く感じますね。ギターだけ弾いていると、気持ちよく感じるかもしれないけど、レコーディング用途には向かないから、切ってしまいましょう」とROLLYさん。音色設定に余念がありません。
そうして選んでいった結果、決まったのは「Mild Crunch」という音色を元に調整したものです。エフェクトは全部オフにし、リバーブもオフにした設定。前回作ったベースとドラムの8小節のトラックに追加する形で、リズムギターをレコーディングしていきます。さらにROLLYさんは、「この上にリードギターも重ねてみましょう。音の設定はリズムギターと同じでいいですね」と言うと、すぐさまリードギターも追加し、全4トラックができあがってしまいました。音色設定にはちょっと時間がかかりましたが、リズムギターとリードギターの2トラックぶんのレコーディングにかかった時間は、なんと5分程度。もちろん、コピー曲ではなく、その場で作ったオリジナル。「やっぱりプロはすごいなぁ」と感心ひとしきり。
ROLLY×週アス『GarageBand』セッション音源1
このあと、すかさずROLLYさんから「じゃあ、これにボーカルを追加してみましょうか。このオーディオインターフェイスはキャノンジャックに対応しているから、マイクもつながるのかな?」と言われたのですが、ここで大失敗。マイクを持って来ようと思っていて、忘れてしまったんですね。残念ながら、取材現場でも見当たらず……。「それなら、iPadの内蔵マイクで録っちゃいましょう。それなりにいい音で録れるから、大丈夫でしょう」とフォローをしていただき、そのまま本番へ。これまで作った4トラックぶんを数回再生しながら、その場で作詞作曲し、3分後にはレコーディングに突入。いとも簡単にメインボーカルが録れてしまいました。さらに、それを再生しながらコーラスパートもレコーディングして、基本となる6トラックが完成です。
ROLLY×週アス『GarageBand』セッション音源2
※取材日時点での情報を元に、ROLLYさんには「1億5000万冊~♪」と歌っていただきましたが、正しくは「1億6000万冊」です。
ここまで、トータルで30分もかかっていなかったように思います。あっけないほどすぐにできあがってしまいました。次回はこれを元にして、トラックダウンやリミックスにチャレンジしてみたいと思います。
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。週刊アスキー本誌にも掲載中です。次回もどうぞお楽しみに。
『GarageBand』
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