第378回
3DMarkではRadeon RX 6400&GeForce GTX 1650超え
Arc A380搭載グラボを徹底検証!インテルのエントリーゲーマー向けdGPUの現状性能は?
動作中の温度やクロックを観察してみた
ゲームやクリエイティブアプリの検証はこのあたりにして、今回テストしたASRock製Arc A380搭載ビデオカードがゲーム中にどの程度のクロックで動作し、どの程度発熱するのかも検証しておこう。ゲームはMONSTER HUNTER RISEを選択し、ゲームを始めてすぐの村の入口で15分程度放置し、その際のGPU温度やクロックなどを「HWiNFO Pro」で追跡した。室温は約28度である。
ゲーム中のGPUクロックは2450MHzでほとんど動かず、GPU温度は76度あたりで頭打ち気味になる。回路規模もTDPも比較的小さいGPUであるため、2スロット厚&小型クーラーでも十分冷やせるようだ。
最後にTBP(Total Board Power)の実測値を検証してみたい。Arc A380のTDPは75Wなので、本来はPCI Express×16スロットから供給される電力だけまかなえる。しかし、なぜかカードには8ピンの補助電源コネクターがあり、システム全体の消費電力も大きめだ。
そこで、NVIDIA「PCAT」を利用し、ゲーム(MONSTER HUNTER RISE)プレイ中のTBPを計測した。ゲームがプレイアブルな状態になってから計測をスタートしている。
TDPが75Wなのに補助電源を必要とする理由、それはこのグラフにヒントがある。今回試用したASRock製のビデオカードでは、PCI Express×16スロットからほとんど電力を取得せずに、8ピン補助電源からの電力だけで動いているのだ。
計測時に観測した瞬間的な最大TBPは81Wを記録しているが、これが補助電源を必要としている理由のひとつだろう。時間としては0.1秒程度と短いが、補助電源なしでTBPが75Wを超えてしまうと安定性確保に問題が出るから補助電源を付けた、という感じではないかと推察している。
まとめ:現状ではゲームによりけりで評価が分かれる
ドライバーの改良がなければ今後は厳しい
以上でArc A380のレビューは終了だ。3DMarkではRadeon RX 6400やGeForce GTX 1650を超える性能を発揮したものの、実際のゲームでは勝ったり負けたり。また、フレームレートのデータは同設定で複数回チェックしているが、1回目は通っても2回目で画面が突然暗転するというトラブルも時々あった。
さらに、ReSizable BARを無効にするとベンチマークが完走しないゲーム(Rainbow Six Siege)があったり、フレームレート計測ツールと併用したらフリーズすることもあるなど、いかにも「初物」らしいところも。そういった意味では先述のAPI選択も含め、安定する条件を細かく探れるユーザーならまだしも、PC知識にうといゲーマーだと気楽にオススメできない点が悩ましい。
しかしながら、この原因は主にドライバーの出来と言える。ゆえに、これからゲーマーやゲーム開発メーカーのフィードバックを吸収し、完成度が上がる可能性は大いにありうる。そもそもArc A380は中国では先行しているものの、日本を含むその他の多くの国ではまだ普及していない。フィードバックが増えて、ドライバーが改良されたら、その時にもう一度検証してみたいと思う。
Arc Aシリーズはこれから登場するであろうインテル製dGPUの先導役を担っている。すでにロードマップでは後継として開発コードネーム「BattleMage」、「Celestial」、「Druid」が出てくることが判明している。となると、誕生したばかりの雛鳥の成長を見守るつもりで、Arc Aシリーズと付き合ってみるのもまた一興ではないか。「Arcを育てたのは俺だ」と将来言えるようになるかもしれない。
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