専門家の予測はサルにも劣る
著 ダン・ガードナー
飛鳥新社
1680円
2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
著 英『エコノミスト』編集部
文藝春秋
1838円
気象を操作したいと願った人間の歴史
著 ジェイムズ・ロジャー・フレミング
紀伊國屋書店
3360円
むかし読んだ未来予測本には、21世紀の人類はクロレラを食べていると書かれていた。ブーブー不正解。ダン・ガードナーの『専門家の予測はサルにも劣る』は、そんな未来予測の失敗の歴史を取り上げる。
なぜ未来予測は当たらないか。この本によると、人は常に自分の時代を「先が不透明」と捉え「昔とは違う」と考えるという。なので専門家は今を“不確実の時代”の到来と指摘する。だがそれは『ニューヨーク・タイムズ』に2800回も登場した月並みな認識。歴史は繰り返すのみで歴史的転換点など滅多に来ないことを人は信じないのだ。
一方、『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』は、それでも予測は可能であるとして書かれたものだ。
未来を過去の連続として見ること、そして技術の発展を踏まえての予測。この二つが本書のポイント。本書は、その予測手法で、人口動向、経済圏、政治、宗教の2050年を予測する。
ITの未来予測は難しそうだが、本書によると2050年の社会では国家からフライパンまで、あらゆるものがソーシャル化(世界の相互接続性が向上)され、集団的知性が応用されているのだそうだ。ほんとかね。
気象の予測・操作とは西洋の科学文明にとっての最終到達地点だ。“科学革命”を標榜したF・ベーコンを始め、そこに足を踏み込んでいった多くの夢想者たちの物語を集めたのが『気象を操作したいと願った人間の歴史』である。
個人的に興味深かったのは、軍事と気象の関係、そして気象兵器について書かれた章だ。『機動戦士ガンダム』で、初めて地球に来た連邦軍の兵士が、カミナリを見てジオンの秘密兵器と勘違いするシーンがあるが、まさに“気象戦士”は、軍事技術にとって常に夢の存在だったことを知ることができる。
未来予測が当たる未来はいつか到来するだろうとここで予測しておきたい。
速水健朗
フリー編集者・ライター。主著『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)。NHK『NEWS WEB24』出演中。
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※本記事は週刊アスキー10月30日号(10月16日発売)の記事を転載したものです。
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