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【私のハマった3冊】役者、撮影技術、スタント 映画鑑賞がより楽しくなる3冊

2012年10月02日 18時00分更新

私のハマった3冊

高倉健インタヴューズ
著 野地秩嘉
プレジデント社
1680円

マスターショット100
著 クリストファー・ケンワーシー
フィルムアート社
2415円

アクション・バイブル
著 早瀬重希
マール社
1890円

 映画評論家として執筆陣に加えていただきながら、これまで映画本を紹介していない事に気づいた。このままでは、ホームレス入門や貧乏食生活といったキワモノ本ばかり読む男と思われてしまう。時すでに遅しという気もするが、今回は本業に役立つ関連書を選りすぐってみた。

『高倉健インタヴューズ』は、映画の重要要素“役者”心理の理解に役立った一冊。高倉健といえば、夜遅く撮影を見に来たファンが無事帰宅できるか心配になり、自分で運転して送ってやったなどというエピソードをいくつももつ。そんな人間味溢れる大スターの撮影現場を、監督など関係者の証言も織り交ぜ臨場感たっぷりに再構成。インタビュー集は単調になりがちだが、著者はノンフィクション作家だけあって物語調にうまくまとめてある。そんな著者が18年間取材し続けて、ようやく本著200ページ足らずの分量というのだから、なんともコスパの悪い取材相手だが、そこには「食中毒防止のため撮影中はカレーと豚汁しか食べない」など、プロのストイックな生き様が凝縮されている。

『マスターショット100』は“撮影技術”の極意を集めた本。英国出身のPV監督が、低予算でも大作にみせかけるカメラテクをこれでもかと紹介する。各項目ではそれぞれ有名映画のシーンを例に挙げ、カメラ配置等を3DCGで図解。使用レンズや効果の説明も抜かりがない。もしあなたが動画制作者なら、友人か、もしいなければ少々空しいが美少女フィギュアか何かをこの本の通りに並べて一度撮ってみるといい。下手な高額セミナーよりよほど勉強になる。

『アクション・バイブル』は香港映画等でおなじみの“スタント”のマニュアル本。派手な転び方や痛そうに見える殴られ方のコツが写真で解説されている。知っても生活の役にはまったく立たないが、少なくとも今後のアクション映画鑑賞の楽しみは大いに増すだろう。

前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテイメント”をテレビ等で展開中。

※本記事は週刊アスキー10月16日号(10月2日発売)の記事を転載したものです。

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