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【私のハマった3冊】科学者は何を考えているのか 生物や宇宙を理解する科学読み物

2012年08月13日 13時00分更新

私のハマった3冊

科学の扉をノックする
著 小川洋子
集英社文庫
480円

ゾウの時間 ネズミの時間
著 本川達雄
中公新書
714円

宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか
著 吉田直紀
宝島社新書
700円

 自然科学系の出版社に勤めていることもあり、科学読み物を三冊紹介したい。これをきっかけに科学本に興味をもち、最終的にはわが社の本にも手を伸ばしていただければ、私の給料もアップするというものだ(笑)。

 一冊目は、ちょっと変化球かもしれないが『科学の扉をノックする』。作家の小川洋子さんが七人の科学者を訪ねて対話した様子をまとめたもの。小川さんの感性と、各科学者の感性とが絶妙に絡み合い、興味深い話題が引き出される。それを小川さんがみずからまとめるのだから、普通のインタビュー集にとどまるはずがない。“科学者って、何を考えとるんや?”ということを知るには外せない一冊。小川さんの科学に対する愛情が伝わってくる本でもある。

 二冊目は、一般向け科学書の大ベストセラー『ゾウの時間 ネズミの時間』。ちょうど20年前に刊行された本だが、その魅力はいまだ衰えることはない。生物を“サイズ”という観点から見ることにより“なぜネズミは短命でゾウは長寿命なのか”など、さまざまなことが明らかになる。われわれ人類は実はかなりの大型動物だという事実は、“知ってなるほど”だ。なお『絵ときゾウの時間とネズミの時間』という本書を子ども向け絵本にしたものも出版されている。

 最後は、科学読み物の王道とも言える、宇宙に関する本。いま、宇宙に関する読み物(や研究)は、物理学に属するものが多い。いまや天文学や地学は、物理学なしでは語れないのだ。しかしその種の本は素粒子や量子力学などを扱わざるを得ず、非常に難解である。

 そこへ登場したのが昨年出版された『宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか』の吉田直紀さん。これまで、この手の本を読んでは挫折してきたのだが、本書は実にやさしく書かれていて、よく理解できた。「宇宙には興味あるけど、素粒子とかヒッグス粒子とか言われても……」という方にはぜひおすすめの一冊である。

Bachakov(バチャコフ)
書評コミュニティーサイト『本が好き!』(外部リンク)レビュアー。自然科学系専門書出版社に勤務するアラフォー競馬オヤジ。

※本記事は週刊アスキー7月31日号(7月17日発売)の記事を転載したものです。

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