大盛況に終わったニコニコ超会議。さまざまなドラマが生まれたイベントだったが、鉄道ファンにとっても印象に残る出来事だった。鉄道好きで知られるミュージシャン向谷実氏がプロデュースした2つの列車『ブルートレイン ニコニコ超会議号』と『ミステリートレイン ニコニコ超会議号』。同乗したライターシバタがその走行の軌跡をレポートする。
■ブルートレイン ニコニコ超会議号はこんな列車だった!
ブルートレイン ニコニコ超会議号は、関西方面から超会議の会場へ参加者を運ぶために企画された列車だ。4月27日の17時49分に大阪駅を出発し、東海道本線、湖西線、北陸本線、信越線、上越線、高崎線を経由して翌28日の9時26分に上野駅に到着した。走行距離は約784.8キロメートル。15時間37分もの長旅となった。
使用された車輌はJR東日本 青森車両センター所属の24系寝台客車、通称“ブルートレイン”。編成は、大阪発車時の進行方向から、カニ24 23(白帯)、オハネフ25 205(金帯)、オハネ25 210(金帯)、オハネ24 3(金帯)、オハネ24 19(白帯)、オハネフ24 10(金帯) となった。なお、ブルートレインは車輌によって青い車体に金、銀、白という3種類の“帯”と呼ばれるラインが引かれており、カッコ書きはその色を表している。客室はすべて2段ベットが並ぶ解放B寝台。乗客は100名強となった。
そのブルートレインを牽引した機関車は大阪~長岡駅間でJR西日本 敦賀運転派出のEF81 108号機(ローズピンク色)。長岡~上野駅間では、JR東日本 青森車両センターのEF81 138号機(JR東日本カラー)となった。
■大阪駅や沿線には鉄道ファンが大挙してつめかけた!
超会議号発車19分前の4月27日の17時30分ごろ、大阪駅の10番線と11番線には超会議号をひと目見ようと大勢の鉄道ファンが詰めかけ、撮影を行なった。正確な人数はわからないが、少なくとも、11番線のホーム端には60名前後が確認できた。10番線やほかの場所を含めると、300人前後はいたのではないだろうか。
また、大阪駅~京都駅間や渋川駅周辺など沿線には超会議号を撮影しようと多くのファンが集まった。特に直江津駅での運転停車では、臨時急行『きたぐに』と本列車が並んだこともあり、深夜1時にもかかわらず30人近くの撮影者が確認できた。
■既に次なる野望を語る向谷氏
出発を前にプロデューサーの向谷氏と、同乗するテクノユニット『SUPER BELL''Z』の車掌DJ野月氏が登場。向谷氏は「これだけ人がつめかけたのには驚いた。今後もブルートレインを走らせていきたい。たとえば九州から東京へ向かう列車や、SLが牽引する列車をやってみたい。」と、出発前からもう次なる野望を語っていた。
17時41分10番線にニコニコ超会議号が入線。歓声と拍手がわき上がった! ホームの機関車の付近は人であふれかえり、超会議号を1枚でも撮影しようと撮影者たちが押すな押すなと大混乱となった。
向谷氏と野月氏が乗り込んでいよいよ出発。今回のツアーでは、朝食は出るが夕食が用意されておらず、また車内販売もないため乗客たちは両手いっぱいに食べ物やアルコール類などをさげて乗り込んでいた。
■車内はもうカオス状態!? Nゲージのブルトレが走った!
超会議号の車内では、向谷氏と野月氏がボックスずつ回って、参加者と鉄道談義に花を咲かせていた。あまりにも話が弾んでいたせいか、結局ツアー参加者すべての席を回るのに4時間近く掛かっていた。
車内は車窓の風景を楽しんだり、寝台でゆっくりとくつろぐ参加者も多かったが、カメラを吸盤付きの三脚で窓に貼り付けて全区間の車窓を撮影しようという筋金入りの乗り鉄や、ニコ生で中継しようという生主まで、普通の寝台特急とはまったく違う雰囲気となった。
特に雰囲気が違っていたのが5号車。なんと車内のベッドでNゲージの鉄道模型を走らせるグループが登場。関西にある某大学の鉄道研究会の部員だという。
Nゲージの線路は鉄道研究会らしく、複線とクロスポイントを活用した引き込み線など、割と本格的に敷いてあった。その線路の上には、ブルートレイン『あけぼの』や『北陸』を走らせており、まさにブルートレインの中でブルーレインが走っていた。
しかも、電源は洗面台にあるひげそり用のコンセントからタップで引っ張ってくるという、寝台車では前代未聞の楽しみ方をしていた。車掌さんの許可を取ったとのことだったが、このような貸し切りの団体臨時列車のため、特別に大目に見てくれたのだろう。普通の定期列車でやると確実に怒られるので、マネしないでほしい。
この“車内運転会”の噂は瞬時に車内を駆け巡り、5号車の通路はこれを見に来る人たちで大混雑。ほかにもニコニコ生放送をしていたり、生放送の視聴者と交流して盛り上がったりと、5号車はまさに鉄道好きとニコニコ動画好きがミックスされたカオス状態。しかも、23時の消灯後も5号車の“パーティー状態”は続いており、この号車の人々はほぼ寝ずに超会議に参加したと思われる。
ちなみに、限定販売のニコニコ超会議号のNゲージモデルも積んであったため、このグループに頼んで走らせてもらった。“ニコニコ超会議号のなかでニコニコ超会議号を走らせてみた”といったところ。編成もその場にあった客車でできるだけ再現してもらった。これには模型を走らせていたグループやまわりのギャラリーも大興奮。0時近い時間帯にもかかわらず列ができるほどの撮影会となった。
よく見ると、5号車は車内の“オハネフ25 205”という車番までイタズラされて、"オハネフ ニコニコ"になっていた。
■機関車交換で静かな大興奮の長岡駅
23時を過ぎ深夜帯となってきたため、寝台特急恒例の“おやすみ放送”が流れた。このときの野月氏のトークには車内から思わず笑い声があふれた。
【野月氏の“おやすみ放送”】
「深夜帯につき、車窓左手、美しい日本海などはまったくご覧になれません。また、お休みのお客様も多くなっております。ブルトレの鉄道模型を走らせるなど、ご迷惑な行為はおやめください。みなさまも24系寝台車で寝心地を味わえるようにお休みになることをオススメいたします。寝ろ!」
列車は柏崎で臨時寝台特急日本海号とすれ違い、一路長岡駅を目指す。長岡到着は2時14分。ここでは鉄道ファンにとっては大きなイベントが待っている。“釜替え”こと機関車交換だ。大阪から長岡駅まではJR西日本のEF81型機関車がけん引してきたが、長岡からは列車の方向転換を行ない、JR東日本のEF81型機関車が引き継ぐ。このような機関車交換があるのは、ブルートレインのような客車列車ならでは。また、このように長岡駅で機関車交換と方向転換が行なわれるのは、2010年3月に廃止された寝台特急『北陸』から約2年ぶり。
列車は寝台特急『北陸』と同じ長岡駅の3番線に入線。ちなみに、編成のいちばん後ろの車輌の貫通扉のある窓は、この機関車交換が間近で見られる唯一の場所だ。そのため30分以上前からこれを見ようと生主が陣取っていたほか、ガラス窓にカメラを貼り付けて動画を録画している乗客がいた。この窓から機関車交換を見ようという乗客たちは徐々に増え続け、深夜3時前にもかかわらず、機関車交換の瞬間には、付近の通路は身動きできないぐらいのすし詰め状態となった。
長岡駅はこの時間帯はホームに入ることができないため、撮影は難しい場所ではあるものの、周囲からなんとか撮影しようというファンが何人か見られた。
長岡駅に到着後、左方向の5番線に寝台特急『あけぼの』が到着。ブルートレインが長岡駅で並んだ! まず『あけぼの』をけん引してきたEF81型機関車が外されて、長岡車両センター方面へと回送された。正面の約300メーター先には、機関車と思われる上部に2つのヘッドライトを点け、尾灯を片側だけ点灯させている車両が停車しており、これが超会議号用の機関車と思われたが、闇の中にたたずむその姿はどのような形式かわからなかった。
その機関車が接近してきたときには、車内から思わず歓声があがったが、実は『あけぼの』用のEF64型機関車だったため、肩すかしをくった感じとなった。EF64が5番線に入り『あけぼの』と連結されたとき、さらに前方に機関車と思われるヘッドライトを確認。徐々に接近してきた。今度こそ超会議号をけん引するEF81 138号だ。機関車は5メーター手前で一端停止し、連結器とブレーキホースの準備をすると、さらに接近して超会議号と連結。車内は静かな興奮に包まれた。連結作業は5分ほどで終了した。
この後『あけぼの』が発車。『あけぼの』の車内からも超会議号を撮っている人が何人か見られた。
長岡まで超会議号をけん引してきたEF81のローズピンク色は4番線に回送され、超会議号からその姿を見ることができた。このEF81も長岡車両センター方面へと回送された。
こうして3時35分、超会議号は長岡駅を出発。深夜の長岡駅での静かなドラマは幕を閉じた。
■激レア決定!限定100個のNゲージ
ツアーの参加者には、時刻表入りの記念台紙とセットになった座席表と、超会議号オリジナルデザインのお箸“ハシ鉄”、そして車内で流れた向谷氏が作成したオリジナル車内チャイム入りのCDなどがプレゼントされた。どれもツアーに参加しなければ手に入れられない貴重なものだ。また、高崎駅で積み込まれたオリジナル駅弁も朝食として提供された。
また、ツアーの参加者には限定100個だけ生産された、NゲージのEF81型電気機関車(税込み6700円)の優先購入券がプレゼントされた。このNゲージだが、当初は会場での販売も予定されていたようだが、ツアーの購入希望者があまりにも多かったため、ツアー参加者だけで抽選となった。
このNゲージは3月に発売となったTOMIX製の『9125 JR EF81形電気機関車(敦賀運転所)』がベースになったもので、ニコニコ超会議号のヘッドマークが付属するほか、パッケージもニコニコ超会議号のオリジナルデザインとなった。製品として出来の良い現行仕様で、かつ100個しかつくられないオリジナルパッケージということもあり、鉄道模型として“激レア”が決定してしまったようだ。
■短くて長い旅の終わり上野駅14番線に到着
列車は7時5分に高崎駅に到着。向谷氏と野月氏、プレス陣はこのあとのミステリートレインに乗車するために、名残惜しいが下車。記念撮影をしてから足早に新幹線ホームへと向かった。
そして、列車は9時26分、上野駅の14番線に到着。ホームの周辺は到着をひと目見ようと多くのファンが押し寄せた。人は多かったものの、廃止される列車の出発時によく見られる「そこどけ!」などといった罵声大会はなかったようで、平和な雰囲気だったとのこと。また、13番線に到着する寝台特急北斗星との並びが実現するかと思われたが、残念ながら当日は北斗星が遅れており、ランデブーは実現しなかった。
ツアー参加者はこの後、上野駅からシャトルバスで超会議の会場まで移動した。こうしてブルートレイン ニコニコ超会議号の旅は終わりを告げた。列車は一度、尾久にある車輌基地に回送され、その後、所属基地の青森まで戻っていった。
■関連サイト
ニコニコ超会議
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