週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

枝野大臣が超会議に参戦! 超クール・ジャパン作戦会議【ニコニコ超会議】

2012年05月08日 19時00分更新

 4月28日から2日間に渡って幕張メッセで開催されたニコニコ超会議。ニコニコ動画のあらゆるコンテンツを現実空間に再現することを目指したこのイベントでは、会場のあちこちでありとあらゆる展示や催しが行なわれ、ジャパンコンテンツの多様性(言い換えればカオス)を目の当たりにすることができた。

超クール・ジャパン作戦会議

 会場の言論コロシアムを満員にした“超クール・ジャパン作戦会議”では、クール・ジャパン政策を推進する枝野幸男経済産業相も登壇。もともとイギリスのクール・ブリタニカ政策が発祥で、日本もそれにならってポップカルチャーなどの輸出を目論むこの政策――「名前は知っているけど、何をやっているのかよくわからない」、「国が口を挟むとロクなことにならない」とも言われることも多いが、枝野大臣や識者はどう捉えているのだろうか? 超会議の熱狂の中で行なわれた議論の一部を紹介しよう。

超クール・ジャパン作戦会議

 イベント直前には、ドワンゴ川上会長とニワンゴ杉本社長の案内のもと、多くの報道陣とSPに囲まれながら超会議会場内を視察した枝野大臣。「放っておいては、コンテンツは海外に拡がらない」と前置きしたうえで、クール・ジャパン政策はあくまで「稼いでくれるビジネスやその仕組みづくりを後押しするもの」と解説する。枝野大臣は自身もAKBのファンであることを明かしながら「韓流ドラマ・アイドルが日本で人気があるのならば、日本のコンテンツだって海外でもっと評価されていいはず。それは伝統文化にとどまらない。実際、日本の食品が海外のスーパーで高く売られたりする。B-1グランプリに象徴されるようなB級グルメだって商売になるんじゃないか」とそのイメージを述べた。

超クール・ジャパン作戦会議

 司会の津田大介氏は、クール・ジャパンとして“売れる”コンテンツとは何か? 売れそうなコンテンツをどうやって世界に広めて行くのか? という2つのテーマを設定し、パネリストに意見を求めていった。各氏の発言をまとめてみよう。

超クール・ジャパン作戦会議

 日本のポップカルチャーを英語で発信するポータルサイト『カルチャージャパン』を運営するダニー・チュー氏は、自らもアニメで日本語を独学で身につけたことを紹介し、「アニメなどももちろん海外での人気が高いが、日本人がその価値に気がついていないのが“言葉”だ」と指摘する。「かつて海外で日本語のコンテンツに触れる手段は限られていたが、今はネット・ソーシャルメディアがある。それを活用してもっと日本語で海外に情報発信し、直接やり取りしても良いのではないか」

超クール・ジャパン作戦会議

 ファッション誌『marie claire』元編集長で、ファッションジャーナリストの生駒芳子氏は自らを“リア充出身”としながらも、「クール・ジャパンに関わるようになり、伝統工芸を新しい形で発信することにも関心が拡がった」と述べる一方、「ユニクロなどのメジャーブランドだけでなく、ギャルファッションやストリート系も海外で注目が集まっている」と語る。「好きなことを極めることでそれがおのずと普遍性をもってくる。“日本”を売りにしすぎる必要はない」

超クール・ジャパン作戦会議

 ITを活用したユニークなサービス・プロダクトを生んでいるチームラボ代表取締役社長の猪子寿之氏は、「日本の伝統文化とポップカルチャーはいっしょみたいに見える、両方すごく好き」と述べたうえで、「日本では、初音ミクのように現実には存在しない非実在コンテンツがおもしろい。ネットの創作とも相性がいい、そういったものが世界に拡がっていくのではないか」とした。「いままではそういったコンテンツはひっそりと、政府に発見されることもなく勝手に成長し成熟してきた。本来それはほかの産業とセットで進出すべきものであり、コンテンツに注目するあまり、その育ち方を逆に壊すような法律や規制ができてしまうことには心配もある」

超クール・ジャパン作戦会議

 由紀さおりのコラボレーションアルバム『1969』をiTunes全米ジャズチャート1位にした、音楽プロデューサーの佐藤剛氏は、「『上を向いて歩こう』以来半世紀、世界中でヒットした日本の音楽はない。そこに学ぶことで日本語でも世界に通用する作品をつくることができた」と語り、「長く根付いてきた西洋コンプレックスから脱却し、迎合するのではなく日本人がふだん楽しんでいるものを打ち出していくべき。ネットやソーシャルメディアによってそれを素早く展開できる可能性は広がっている」とした。

超クール・ジャパン作戦会議

 超会議でのヒット商品となった『necomimi』をつけたまま登壇したドワンゴの川上会長。「クール・ジャパンという言葉はさておき、日本の文化は世界中からおもしろがられている。広げていくことは十分可能。コンテンツによる文化輸出は従来の広告などに比べ宣伝効果が最も高い」と言い、「日本人は細かい部分は合理的だけど、“何か間違ったところ”にも情熱を傾ける。超会議にこれだけの人が集まる、つまり日本のネット上に多い“ヒマ人”がそれを生み出している」と述べ会場とそれを視聴するユーザーの笑いを誘っていた。「海外進出といえば、これまで海外に拠点をつくって……というのが当たり前だったが、ニコニコのようなネットのプラットフォームを活用すれば、日本に居ながらそれが可能になるはず。向こうからこちらにやって来てもらえばいい」

超クール・ジャパン作戦会議

 津田氏の指名を受け、終盤飛び入りでコメントを寄せた社会学者の宇野常寛氏は、「コンテンツそのものを海外にもっていっても、それを受容する文化がそこにはない。まず、消費文化やコミュニケーションの様式を含めて輸出しないと本格的には根付かない。ニコ動やコミケのようなファンコミュニティーの場がコンテンツといっしょに海外に出て行かなければならない」と指摘した。

超クール・ジャパン作戦会議

 自身もときどきニコニコ動画を視聴するという枝野大臣は、「今日のこの場こそが、まさにクール・ジャパン。どこから知恵が出てくるかわからない、そしてそこから何かが生まれるプロセスもコンテンツになっている」と述べ、「わたし自身英語ができないので、海外に迎合のしようがない。今の若い世代は、実はそこにコンプレックスがないので、海外にはないユニークなものが生まれているのではないか」と考えを披露し、「コンテンツによる付加価値をビジネスに結びつけるためのマッチングの場を用意した。口を出すのではなく、そういった場所を提供することが役所に求められている役割」と疑問に答えた。「成熟した日本文化を、そのまま発信する。進出ではなく発見される機会やアーカイブが集積された場所をつくっていく。そのためには柔軟な著作権法のあり方が求められるがハードルも多い。ぜひニコ動などを通じてコメントやアイデアを寄せ、応援してほしい」と述べ、イベントを締めくくった。

■関連サイト
ニコニコ超会議公式サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう