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【私のハマった3冊】ロボット兵が人間を排除する“ターミネーター”な未来の戦争

2012年05月02日 19時00分更新

私のハマった3冊

ロボット兵士の戦争
P・W・シンガー
NHK出版
3570円

戦争の世界史
ウィリアム・H・マクニール
刀水書房
7875円

戦闘妖精・雪風〈改〉
神林長平
ハヤカワ文庫
777円

 技術革新により、戦争の定義が激変している。歴史が示す先は、SFを読むほうが早い。SFは未来の歴史書なのかも。

 まず現代、『ロボット兵士の戦争』だ。軍用ロボット技術の現状を洞察し、戦場で活躍する無人システムを解説する。紹介されるロボット兵はSFまんまなのだが、その技術は日常に直結している。例えばルンバを作ったiRobot社の軍用ロボはUSBポートが搭載されており、iPodや散弾銃がプラグインで接続可能だ(最近の銃はUSB接続できる)。おかげで最もコストを要する人件費が削減できる。無人戦闘機にとって、人間のパイロットは邪魔だ。高速旋回や加速に耐えられず、失神するから。人は標的を間違えるし、休息が必要で、感情や欲望により不安定になる。無人システムの発達は戦場から“人”を疎外する。

 そして過去、『戦争の世界史』で、技芸としての戦争が商業化・産業化されていく過程を眺める。投石から弓矢、弾丸から大陸間弾道ミサイルまでの技術史をたどると、テクノロジーは、戦場から兵士を引き離す方向へ働いているのが分かる。自己矛盾した物言いだが、戦争の非人道化こそが歴史の方角なのだ。

 さらに未来を描いた、SF小説『戦闘妖精雪風』は、現代のロボット兵が直面している、まさに同じ問題が展開される。そこでは、人間そっちのけで侵略者と戦う、意思を持った戦闘機が描かれている。侵略者との戦況が膠着し、テクノロジーが先鋭化するにつれ、搭乗する“ヒト”の存在が、機動性や加速性へのボトルネックになる。そこでは、“戦いには人間が必要なのか”という問いかけが繰り返し重ねられてゆく。

 戦争は人間が引き起こしたものであるにもかかわらず、効率を追求するあまり、人間が排除されている矛盾。人間不在の、人間を排除する戦争である、“ターミネーター”な未来はフィクションでもなんでもない。現実は、SFよりもSFだ。

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー2月21日号(2月7日発売)の記事を転載したものです。

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