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ニコニコ超会議は“新しいもの”を生むきっかけ【中の人に聞くニコニコ超会議】

2012年04月24日 22時30分更新

 4月28日、29日に開催のニコニコ動画の一大イベント“ニコニコ超会議”。ドワンゴの中の人はどういった思いでこの超会議をつくってきたのか。前回のあべちゃんに続き、今回はブース展示を担当した伊豫田旭彦さんにインタビューした。

超会議伊豫田

伊豫田旭彦
 ユーザー生放送やクリエイターズサミットなどのブースを担当。自身もユーザー生放送が始まった当初から“伊予柑”名義で、国内/海外で体当たり系番組を中継してきた。サークル“ニコ生企画放送局”を立ち上げて、パンツ型飛行機をみんなで飛ばす“空フェス”や“ラブプラス結婚式”などのイベントや生放送も実施。ドワンゴ社員としては、ニコ動、ニコニコニュース、ニコニコ本社などを経て、'11年より新設されたユーザー文化推進部に異動して超会議を担当。

──伊豫田さんはどのブースを担当してますか?

伊豫田 ユーザー生放送、にこつく2、超クリエイターズサミット、第二回ニコニコ学会β、超エンジニアミーティング、超多目的スペース、未来の超宇宙展です。あとは会場に8点ぐらいあるニコニコ超目印やコメントアート関連にも関わっています。

──多過ぎですね(笑)。それぞれ見どこを教えてください。

伊豫田 まず有料ゾーンに入ってすぐのところにある4ホールのユーザー生放送では、3つの企画をやる予定です。“超リアルユーザー生放送”は、生主を会場に呼んで、クレープ屋みたいなサイズのブースで実際に生放送やってもらいます。1枠30分、2日で54枠。何をやるかは生主さんににおまかせです。すでにタイムテーブルが出ているので、そちらもチェックしてみてください。

超会議特番ニコ生

──ユーザー生の醍醐味であるハプニングが見られるという?

伊豫田 ハプニングは歓迎ですが、トラブルはないといいんですけど(笑)。ただ、生主がリアルで集まるというのはすごく価値があることです。目の前でユーザー生放送をやってるのと、放送をとおしてみるのとでは絶対違う。好きな生主に会いにきて30分見て、そのあとみんなでオフ会のように会場を回ってほしい。

伊豫田 2つ目は“リアルナマケット”。ナマケットというのは、ユーザー生放送のお祭りで、おもしろい生主を発掘し、活躍の場を用意してサービス全体の視聴者を増やすという目的でネット上で開催してきました。今回はリアルの場に会場を移して、バラエティー番組のように4つの席をつくり、生主にお題で雑談してもらって、ユーザーアンケートでいちばんおもしろい人を決めます。

超会議特番ニコ生

──どうやって参加できます?

伊豫田 当日、ブースに並んでもらって参加という感じです。勝った人は自分のコミュニティーを1分間宣伝できます。基本、目立てるのがご褒美という。あとは生放送の予約や延長に使えるゴールドチケットが10枚もらえます。リハーサル的な番組を先日行なったんですが、雑談生主の皆さんは本当におもしろいので見るだけでも楽しいと思います。

伊豫田 3つ目は美人天気とコラボした企画。'11年末に開催した“ナマケットGirls”で受賞した女の子3名が来て、撮影会や握手会をやります。

超会議伊豫田

──なかなか濃い感じですね。ブースの規模としては、6ホールにある、作ってみた系の同人イベント“ニコつく2”が大きい。

伊豫田 “ニコニコ技術部”や“エンターテインメント”、“歌ってみた”、“踊ってみた”、“演奏してみた”、“描いてみた”などのカテゴリーから2日間で156サークル、248スペースが出展します。

──技術部系のイベントは、Make: Tokyo Meeting”や“デザイン・フェスタ”をはじめ、全国各地でわりと増えてきました。その参加者が一堂に会するという感じですか?

伊豫田 これまでの方に加えて、主催の方が新しい人を結構スカウトしているようです。ネット中心で発表している人の中には、同人イベントに参加しない方も多い。そうした方々に会えるのが貴重。“歌ってみた”や“踊ってみた”のサークルも多く、1枠30分で弾き語りなどができるステージも用意しているので、興味をもつ人も多いんじゃないでしょうか。

──同人イベントというと頒布のイメージがありますが、ニコつく2は展示が多い感じですか?

伊豫田 そうですね。ここ3年ほどでアマチュアクリエイターのためのイベントが増えたこともあって、出展者側も展示のノウハウがたまってきている。展示物もその見せ方もマックスレベルの状態なので、初見の人はかなり満足できるはずです。手芸部ならぬいぐるみ、シルバー部ではシルバーをその場でつくれるワークショップも展開します。女性も含めて、ニコニコ文化に詳しくない人でも楽しめるブースだと思いますよ。

ニコつく2 in ニコニコ超会議(関連リンク)

──同じ6ホールにあるカンファレンス系もメンバーが豪華です。

伊豫田 超クリエイターズサミット、第二回ニコニコ学会β、超エンジニアミーティングという3つですね。超クリエイターズサミットはかなり大事な企画です。ニコ動を支えてるのは、動画をアップロードしてくれる人なんですが、その方々が活躍する場所が意外とない。ボーカロイドの世界にしても、曲をつくってるのと同じぐらいに動画を手がけてる人がいるはずなのに、動画師の名前はほとんど知られてない。

伊豫田 昨年1度でもニコ動に投稿したことがある方は36万ユーザーいます。その方々のために、カンファレンスを用意しました。顔出ししたくない方もいらっしゃるので、このブースは生放送しません。話を聞きたければ会場に来るしかない。たとえば、“ゲーム実況”や“マインクラフト”は人気が高いので混雑すると思いますよ。

伊豫田 3D作成ツールの“MMD”では、“MMD杯”の第2~8回の優勝者が出席します。アメリカから来るクリエイターもいます。“手描きMAD”では、“んふんふんふんふ”のなめこの歌をつくった姫路れいあさんも出演します。カギさん、ポエ山さんなどフラッシュ全盛期から活躍されてる方もいらっしゃる。

ニコニコ超会議のカンファレンス

──スゴい。ひとりずつ見ていくと相当濃いですね。

伊豫田 動画をつくる人なら、ほかのカンファレンスにも足を向けてほしい。ニコニコ学会は、研究として新しい技術を生み出してる場所。“光学迷彩”を現実にした稲見昌彦さん、歌い方をまねるソフト“ぼかりす”を開発した後藤真孝さん、ケータイやiPhoneの予測変換をつくった増井俊之さんもいらっしゃいます。新しいものをつくる人たちがそこにいる。

伊豫田 さらに超エンジニアミーティングには、その新しいものを実装する人たちが来ます。日本Rubyの会、java-ja、Node.js日本ユーザーグループ、日本 Scala ユーザーズグループ、プログラミング生放送勉強会など、実質ウェブの土台をつくってきた方々から学べる。

3.6ニコニコ超会議

伊豫田 その先に、ウェブの上でコンテンツをつくる人のクリエイターズサミットがあって。さらにコンテンツを消費するいわゆる“ニコ厨”がいろいろなイベントを主催する超多目的スペース(5ホール)がある。超会議内で一気通貫の流れができてるんです。

3.6ニコニコ超会議

──超多目的スペースはなぜ入れたんですか?

伊豫田 ニコニコ動画初期の盛り上げに貢献したにも関わらず不遇な扱いを受けてる動画系クラスタがあります。やってみた系が参加する“ニコつく”のように、これらの動画系カテゴリーが参加できる場所が欲しかった。そこで動画上映会など、ユーザーが自由にイベントを主催できるレンタルスペースである超多目的スペースを用意しました。また、あとはニコ動にとっていちばん大事な行為は、動画の投稿です。だから新作をもってきて、超会議から投稿してほしいです。この辺は、今年1月ぐらいにTwitter上でユーザーに聞いて回って出てきた企画です。

──伊豫田さんは、それこそ自身が生主なので、その辺はずっと見てますよね。

伊豫田 ニコ動運営は、昔はユーザーに関与しないというポリシーでやってきたんです。プラットフォーマーなので、著作権などの環境は整えるけど、中には直接関与しないという。でも昨年、ユーザー文化推進部というのができて、ここで育った文化をちゃんと育てていこうというスタンスに変わってきました。超会議には、そのユーザーから聞いた声が反映されています。

ニコニコ動画 ユーザー文化推進部(関連サイト)

超会議伊豫田

──ひとつひとつのブースに思いがこもってるという。6ホールの“未来の超宇宙展”は?

伊豫田 はやぶさで大成功を収めたJAXA、ホリエモンロケットを手がけてる民間団体のSNS、ニコニコ技術部が母体のSOMESATが参加します。注目は2日目の最後に行なうトークセッションで、公的機関、株式会社、ユーザーと立場が違う3団体に加えて、小説『南極点のピアピア動画』を書いた尻Pが宇宙を語ります。

──宇宙を入れた理由は?

伊豫田 ニコニコ生放送で生中継したはやぶさ帰還の番組が多くの人の記憶に残ってますし、そもそもがニコ動のすべてを再現というコンセプトです。先に実施したニコニコ大会議で、ジャンルが音楽に偏ってしまったという反省があります。あとは最近、ニコ動がタコツボ化してきて、ひとつのジャンルしか見ないという人も増えてきてる。それをひっかき回して、何か新しいものを生みたい。

3.6ニコニコ超会議

──しかし、伊豫田さんに解説いただいたブースも含めて、ドワンゴだけで60ぐらいのブースがあるという。よく企画しましたね……。

伊豫田 いちばん最初は広大な国際展示場をどうやって埋めるかという話だったんです。計算したら、全部埋めるにはディズニーランドぐらいの規模が必要だった。社員全員に企画を出せという指令がでて、100個をゆうに超える企画書が集まって、厳選した企画を実現しています。特にカンファレンス系は、本気で見だすといくら時間があっても足らない。多分、良くも悪くも伝説なイベントになると思います。

──ドワンゴの川上会長も同じことをおっしゃってました(笑)。

伊豫田 ふだん、ニコ動を観ている人なら絶対に楽しめるところがある。スケジュールや内容はようやく全部を公開できることができたので、事前準備をして、がっつり来たほうが楽しめると思います。ぼーっと歩いても楽しいですが、絶対に2度と開催されないイベントがそこら中にあるので見そびれるのがもったいないです。

超会議伊豫田

──そもそも伊豫田さんはどういった背景でニコ動に関わってきたんですか?

伊豫田 ドワンゴの入社試験を受けたのはニコ動が始まる前で、入って携帯部門に配属されたころに最初のバージョンの“ニコニコ動画(仮)”が始まりました。当時は2ちゃんねるが好きだったこともあって、ただのユーザーとして見ていたんです。毎日ランキングをチェックしたり。そこからユーザー生放送が始まって、直接的な反応が来ておもしろいからつくる側としてハマりました。

──ドイツや南アフリカにも行かれてましたよね。

伊豫田 ジンバブエやヨハネスブルクに行きましたね、懐かしい。その後、“ニコニコ動画(9)”の開発に回ってニコレポ機能をつくって、“ニコニコニュース”の立ち上げに関わっています。さらに人手が足らないからという指令が出てニコニコ本社に移ってカフェの店長もやってました。

── むちゃくちゃだ(笑)。

伊豫田 '11年になってユーザーまわりがわかるだろうということで、できたばかりのユーザー文化推進部に呼ばれたという。それでとりあえず全部入れようということでたくさん企画を出したら、たくさんやるはめになったという(笑)。

伊豫田 ずっとものづくりがおもしろくて、新しいものが好きだったんです。大学院の研究テーマは『バーチャルリアリティーと創造性支援』でした。どうやったらブレストでいいアイデアが出てくるのか、どうしたらアイデアをうまく表現できるのか……。人の創造性がどこからくるのかわかったら、日本の競争力が上がるよねというゴールで研究してました。

伊豫田 最近、ニコ動がタコツボ化しておもしろくなくなったというのは自分も感じてることです。超会議がそこをひっかき回す機会になって、新しいものが生まれていってほしい。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」という有名な言葉のように、新しいものを生むためには、既存のものが多くあって組み合わせしやすいほうがいい。

──そうすると、超会議はニコ動にまったく関係ないクリエイターの人でも刺激を受けそうです。

伊豫田 そうですね。“Make: Tokyo Meeting”や“デザイン・フェスタ”といっしょで、知らないからこそおもしろい部分もあるかと思います。超会議で盛り上がることがゴールなんじゃなくて超会議のあとにニコ動に新しい何かが生まれるのがゴールです。それをいっしょに見るためにも、ぜひ遊びにきてください。

■関連サイト
ニコニコ超会議サイト

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