4月28日、29日、ニコニコ動画の一大イベント“ニコニコ超会議”が幕張メッセにて開催する。幕張メッセの国際展示場の1~8ホールとその隣のイベントホールを貸し切るという、IT企業単体の企画としては驚くほど規模の大きな会場だ。
週アスPLUSでは、今までいろいろな出展について記事で取り上げてきたが、ドワンゴの中の人たちはどういった思いで超会議にのぞんでいるのだろうか。3回に渡って、お伝えしていこう。初回はニコニコ超パーティーを担当している“あべちゃん”にインタビューした。
あべちゃん
ニコニコ超パーティーの担当者。ニコ動の初期からどっぷりハマって、ニコニコ大会議にもお客として参加した過去をもつ。あまりに好きすぎて、レコード系会社からドワンゴに転職。“ニコニコ大会議2010夏”以降のニコニコ大会議、“Nico Nico D@nce M@ster”など、数々のイベントを手がけてきた。
──今回、超パーティーの出演者はものすごいメンバーがそろっていますね。
あべちゃん 2日間で230名ほど出演します。ニコニコ動画は音楽だけでなく、生放送やゲーム実況、技術部などいろいろなカテゴリーが存在してます。それらの方々をできる限り多くステージにあげたい。
──“降臨してみた”枠も豪華です。
あべちゃん ニコ動では、MADや“やってみた”系のカテゴリーで有名曲がネタ元にされて別の人気が出ることがあります。その歌ってる本人に来ていただければということで、『promise』(ゲッダン)の広瀬香美さんや『SKILL』のJAM Project、『鳥の歌』のLiaさんを呼んでます。ほかにも柴咲コウさん、DECO*27、Teddyloidの“galaxias!”(ギャラクシアス)、きゃりーぱみゅぱみゅさんなどが出演します。
──それだけ出演者が多いと、1パートあたりに割り振れる時間も少ないですよね。
あべちゃん そうなんですよね。すでにぎゅうぎゅうですね。でもやっぱりニコニコ動画には沢山のユーザーさんがいて、極力多くの人を、多くのジャンルからステージにあげたいと思ってます。
──センターステージがあるんですよね。
あべちゃん それは当日までのお楽しみということで。
──舞台と客席で分かれているのではなく、一体化したステージを目指すという。
あべちゃん そう、一体感を出したいんですよ。だから演目によっては、会場にいるお客さんを引っ張ってきてステージに上がってもらうこともあるかも。舞台と客席の間には、すごく薄い壁しかないんです。動画を投稿したら伸びたからステージに上がっている人と、まだ動画を投稿してない人、あるいは動画を投稿したけどまだ伸びてない人というだけで。だから見る側も出演者になれる演出を入れていきたいなぁって。
──それはスゴいけど、うまくいくかどうか少し不安ですね(笑)。
あべちゃん でも、ニコ動でしかできないステージっていうのは、そういうものなんじゃないかなあと思っています。ユーザーさんが上がってくるとか、ムチャぶりとか、動画の文化でしか成り立たないことを実際に降臨させるというか。ほかでできることをやるよりは、新しいことにトライしたい。たとえば、モノサシで演奏する“モノサシスト”さんも出るんですけど、別にギターみたいにケーブルでつないで音を録れるわけじゃない。
──そもそも楽器じゃないですし、見た目が相当地味ですよ。
あべちゃん だけどあんな楽器演奏者ってニコ動にしかないので、じゃあやらなきゃいけない、と。ちゃんと音を再現するために、まず、ふだん使われている机の材質からリサーチしたりとかね。あとは物差しの型番。
──材質と型番(笑)。それは超重要ですよね。
あべちゃん 真剣にアホなことをやるのは、割と労力がかかるということで。あとはゲーム実況もいったい何をやるんだ、みたいな。7人の実況者がいるんですけど、限られた時間の中で何を見せるか。また、ボーカロイドのライブにも力を入れています。
──28日がMikuMikuDance(MMD)の第8回MMD杯動画、29日がボーカロイドですよね。
あべちゃん 2日目もMMDを使うんですよ。初音ミクをはじめ、ボーカロイドが全部で11キャラ。あとは合成歌声ソフト『UTAU』を使った重音テトも出演します。モーションにも凝っていて、ユーザーがつくっているものを流用しつつも、新たに踊り手さんに踊ってもらってキャプチャーしたものを加えています。
──しかしそれだけ大規模の超パーティーでも、過去にニコニコ大会議をつくってきた経験があるから大丈夫という?
あべちゃん それはちょっと言い切れないですが、ハプニングも含めて“おもしろかった”になるのがニコ動らしいですよね。やっぱりカオスな空間をつくりたいですから、生っぽいハプニングはほしい。
──話を聞いていると、あべちゃんさんは生粋の“ニコ厨”ですね。そもそもどういった経緯でニコ動に入ったんですか?
あべちゃん もとをたどると、大学のころにダンスの振り付けをやっていて、そこから紆余曲折を経て、レコード会社に入ったんです。それはエンターテイメントが好きだったから。ただ、商業音楽の世界ではトレンドを追いかけるのが第一なんです。歌詞も“これが刺さるだろう”っていう分析から始またりする。だから似たような曲が生まれていくわけですが。
その入社後にニコ動ができて、最初はそこまで興味をもたなかったんですが、(γ)の後期から(RC1)ぐらいにハマって組曲や合唱、MADを見てました。商業音楽とは音楽性がまったく違ったんですよね。音のトレンドを無視してつくっているというのは、音楽をつくるのが好きで、それをみんなに聴いてほしいっていう純粋な気持ちから生まれていると感じた。ニコ動には純粋な音楽文化があるなと。
音楽のみならず、エンターテイメントとしても、ずっと同じようなものが出てくる業界と違う文化が出てきていると。それを一般ユーザーがつくっているわけですよね。僕はやっぱり音楽やエンターテイメントが好きで、でも産業文科としてではなく、純粋な芸術文化としてのエンターテインメントのほうにどっぷり浸かりたかった。だからニコ動に来たんです。
──謎ですよね。素人ばかりが出ているのに、なぜここまで盛り上がるのか。
あべちゃん その謎感、説明がつかない感は重要にしていきたいですよね。言葉で言い表わせるようになると、おもしろくなくなると思うんです。
ニコ動のイベントは、今までクオリティーを突き詰めてきましたが、それだけにこだわらなくていいんじゃないかと思っていて。クオリティーの中にもネタ要素を盛り込んだり、もっといえば何かしらの変なスター性だけで盛り上がるとか。結局クオリティーを求めていくと青天井なので、「プロの世界と戦うの?」って話になるんです。向こうは長年訓練しているし、何十年も実績を積み重ねている。その土俵を目指す必要って別にないと思っているんです。だからクオリティーだけにこだわらず、ニコ動的なよさを追求してだしていきたい。
──ニコニコ大会議とは違うぞ、という。
あべちゃん 大会議的なものを求める声も多いので、そこも残しつつ、カオスな感じにします。“古参も新参も楽しめる”というのが裏テーマなんです。ニコ動は昔はカオスな作品が多かったですが、最近はきれいにまとまったものが増えてきました。古参に対してはおもしろさメインで訴えつつ、きれい目なものが好きな新参の人たちにもよろこんでもらえるクオリティーは担保するという。
多分、いろいろな意味で伝説に残るライブになるんじゃないかと。会場のチケットは売り切れてしまいましたが、ぜひ生放送のチケットを買って見てみてください。
■関連サイト
ニコニコ超会議サイト
ニコニコ超パーティー
(4月23日19:00追記:一部、内容と表現を変更いたしました)
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