恥知らずのパープルヘイズ
-ジョジョの奇妙な冒険より-
著 上遠野浩平
集英社
1365円
The Book
~jojo’s bizarre adventure 4th another day~
著 乙一
集英社
1575円
荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論
著 荒木飛呂彦
集英社新書
798円
荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』と言えば読者諸兄にもおなじみの(という前提で今回は進めさせてくださいスイマセン)超人気コミックだ。
“VS JOJO”は、そんな人気作を有名作家たちがノベライズする企画である。第一弾となる『恥知らずのパープルヘイズ』は『ブギーポップは笑わない』の上遠野浩平による第5部の後日談。主人公たちが悪逆非道なギャングのボスに反旗を翻したとき、たったひとり組織に残り、そのままフェードアウトしてしまったフーゴ。彼はその後どうなったのか? というファンが誰しも抱く疑問に見事、答えてくれる内容だ。着想からして著者のジョジョへの愛が伝わってくるディ・モールト(非常に)素晴らしい作品である。
上遠野に続き西尾維新、舞城王太郎というビッグネームの登場が予告されている“VS JOJO”だが、それらの刊行を待つ間に読んでいただきたいのが乙一の『The Book』。'07年刊行の第4部ノベライズで、文字通り本のスタンド使いを巡る殺人事件を描く。ジョジョの本領たる知的な能力バトルを見事小説で再現。節々に差し挟まれる小ネタや凝った装丁もグレートだ。
前述した作家をはじめ、多くの創作者に計り知れぬ影響を与えた荒木飛呂彦。『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』は、そんな彼が愛してやまないホラーの名作映画を語り尽くした新書である。取り上げられた作品は、その数、百本。格好のホラー入門であるのはもちろん、荒木作品の“元ネタ”解説としてもおもしろい。だが、それ以上に興味深いのは、本書に一貫して流れる、ホラーの恐ろしさ、醜さがあればこそ、人間の本質が見えてくる、という荒木の視点である。それはきっと“吐き気を催す邪悪”との戦いを通じ、人間の強さを描き続けてきた『ジョジョの奇妙な冒険』の“人間賛歌”というテーマにつながるものだろう。人気作家の原点がかいま見える一冊である。
前島賢
ライター。SF、ライトノベルを中心に活動。著書に『セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』。
※本記事は週刊アスキー11月22日号(11月8日発売)の記事を転載したものです。
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