僕はビートルズ 4
漫画 かわぐちかいじ、原作 藤井哲夫
講談社
570円
タイムマシンのつくり方
著 広瀬正
集英社文庫
780円
新版 タイムトラベルの哲学
著 青山拓央
ちくま文庫
861円
最近ツイッターを見ていたら、現在『モーニング』で連載中のマンガ『僕はビートルズ』が今後どう展開していくのか、読者があれこれ予想していておもしろかった。同作は、現代のビートルズのコピーバンド“ファブ・フォー”が1961年の東京にタイムスリップし、デビュー前のビートルズよりも先に『イエスタデイ』など彼らのナンバーを発表するという、いわば歴史の改変をテーマにしたものだ。単行本の第4巻ではついにビートルズの故郷・リヴァプールが登場、どうやら歴史が激変しつつあることがほのめかされ、ますます続きに期待をもたせる。
『タイムマシンのつくり方』は日本SFにおけるタイムトラベルものの先駆者・広瀬正の短編集だ。そのなかの一編、日露戦争を題材にした『敵艦見ユ』は、時代考証の緻密さなど『僕はビートルズ』に通じるものがある。ただ興味深いのは『敵艦見ユ』といい、同じく収録作でタイムトラベルによる先祖殺しを描いた『Once Upon A Time Machine』といい、最後の最後で歴史改変が回避されていることだ。
はたしてタイムトラベルで歴史は変わるのか、変わらないのか? 『新版 タイムトラベルの哲学』ではいくつかの時間モデルをあげながら、この謎が考察される。このうち歴史改変が生じやすいのは、「未来はひとつだが、その内容はさまざまな可能性を持つ」というモデルだ。これに対し、先の広瀬の短編では「歴史はそもそも一通りの可能性しかもたない」というモデルをとることで改変が避けられる。こうした運命論にも似た広瀬の作風は、一体どこから出てきたのか、短編集の解説で筒井康隆が指摘しているとおり、気になるところではある。
ところで広瀬が小説を発表しはじめたのは'61年、まさに『僕はビートルズ』でファブ・フォーの面々が現代からやって来た年だ。もし広瀬が彼らと出会ったら、きっとタイムトラベルについて質問攻めにするに違いない。
Togetter:「僕はビートルズ」の今後の展開を予想してみた
近藤正高
ライター。著書に『新幹線と日本の半世紀』(交通新聞社)など。一番好きなSF作家は藤子・F・不二雄。
※本記事は週刊アスキー6月7日号(5/24発売)の記事を転載したものです。
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