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【私のハマった3冊】金と恋愛とメシ? 人生をやり直せるなら何をする?

2011年05月12日 22時30分更新

832BOOK

リピート
著 乾くるみ
文春文庫
790円

イチローともジャイアンとも初対面ですぐに仲良くなれる本
著 山口拓朗
こう書房
1365円

めしばな刑事 タチバナ 1
画 旅井とり、作 坂戸佐兵衛
徳間書店
580円

 最近、自称研究者たちの地震予知の的中自慢がネットに氾濫している。当たるまで毎日「起きる」と言ってりゃいいんだから楽な“研究”だが、その狂騒をみて私は傑作小説『リピート』を思い出した。

 見知らぬ男から、いきなり1時間後の地震を予知する電話がかかってくる。正確に的中させた後、男は自分がこの数ヵ月間を何度も“リピート”している時間旅行者だと明かす。偶然みつけたタイムホールを通ると、きまって過去のある日時に戻るらしい。男は暇つぶしに同行者を探し、ランダムに電話をかけていたわけだ。

 不意に訪れた“数ヵ月前から人生をやり直す”チャンス。出発日までにあなたなら何をする? 読み始めたら止まらない面白思考実験で、ミステリーだから驚きの二転三転も楽しめる。

 競馬結果を暗記しておけばカネには困らないが、はたして次に何をするか。ふられたあの子に何度もアタック? ならば『イチローともジャイアンとも初対面ですぐに仲良くなれる本』が武器になる。1500件以上の経験を誇るインタビューのプロがすべてのノウハウを公開。会話相手を12タイプに分類し、具体的な攻略法を羅列する。正直、これを会得すれば相手がどんなオンナ、いやオトコでも落とせるだろう。もっとも自分の場合、やり直すたびにまたふられ、傷が深まるばかりの気もするが。

 色気より食い気なら『めしばな刑事タチバナ』。ある独身中年刑事が、立ちそばやら袋ラーメンといった男の安グルメについて、誰も知らないうんちくを無駄に熱く語る刑事漫画だ。実在するメーカーや店の話だから、トリビア度は満点。失われた牛丼チェーンの歴史など、知っていても何の役にも立たない割に取材の労力を感じさせる濃いネタばかりだが、そのバカバカしさがじつに愛おしい。

 過去に戻ってもこんなのばかり食いたがるであろう、我が舌のチープさもまたしかり。

前田有一
映画批評家。100パーセント消費者側に立った"批評エンタテインメント"をテレビ・ラジオ等で展開中。

※本記事は週刊アスキー5月24日号(5/9発売)の記事を転載したものです。

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