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【私のハマった3冊】人間、清貧こそがいちばん!? 金のかからぬ“粗食”のすすめ

2011年02月03日 07時00分更新

BOOK

粗食のすすめ
著 幕内秀夫
新潮文庫
500円

ホームレス入門-上野の森の紳士録
著 風樹茂
角川文庫
740円

バク転 完全攻略本
監修 吉田哲郎
スタジオタッククリエイティブ
1365円

 忘年・新年会ラッシュで疲れはじめた内臓をちょいと休ませようと『粗食のすすめ』を読んでみた。この本は、病院で食事指導する管理栄養士の筆者が、病気予防の願いを込めて長年の研究をまとめたもの。私の通う歯科医が大の信奉者で、読め読めというので手にしたものだ。

 内容は、人は生まれ育った土地で採れる食材を食するべきで、日本人なら米食中心の粗食が理にかなうというもの。結論は単純だが、傍証となるデータがおもしろい。各動物の母乳成分と赤ちゃんの体重が倍になるまでの期間の相関関係や、人種・国別の大便重量(どう調べたんだ?)の比較など、ユニークな分析を行なう。栄養学のプロが指摘する栄養学の盲点といった趣だが、なにしろ金のかからぬ“粗食”ってトコが気に入った。やっぱり人間、清貧こそがいちばんなのだ。

 そこで調子に乗って『ホームレス入門―上野の森の紳士録』を読んだのだが、これがまずかった。リストラされた中年男が上野公園のテント村へと入ってゆく実録ルポ。風変わりな登場人物との交流が生き生きと描かれ、結末などは小説顔負けの感動モノなのだが、舞台が地元ってこともあり異様にリアル。なんだか自分の将来を見ているようで胃が痛くなった。

『入門』の名にふさわしく、巻末には各種ハウツーまで掲載されており実用度も満点。収入源から凍死者との遭遇まで、知りたいことは全部書いてあるので、明日からでもホームレスをはじめられる。一生、この本が役に立たないことを祈りたい。

 気持ちを切り替えるべく『バク転完全攻略本』を読む。大人の体操教室は少ないので、写真入りの初心者向け解説書は貴重。専門家はこう練習するのかと、目からうろこだ。倒立、側転を経て現在ブリッジの章に挑戦中だから、間もなく私もバク転を会得できるはず。そしたらホームレスになっても大道芸で収入を得られる……って、やっぱりまだ気持ち切り替わってない!

前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った"批評エンタテイメント"をテレビ・ラジオなどで展開中。

 

※本記事は週刊アスキー819号(2/1発売)の記事を転載したものです。

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