ギターアンプシミュレーターの元祖とも言える米Line 6の『POD』。そのLine 6もいまやヤマハ傘下の企業となったわけですが、その勢いはいまだ止まりません。先日発売された『AMPLIFi TT』という機材がなかなか面白いので、ROLLYさんに使ってもらいました。
このAMPLIFi TT、見た目はギターアンプのヘッド部分のようにも見えるのですが、使い方自体は、まさにギターアンプそのもの。ここに並んでいるパラメーターを見ると“DRIVE”、“BASS”、“MID”、“TREBLE”、“REVERB”そして“VOLUME”ですから、ギターアンプを触ったことのある人なら、なんら違和感なく使えると思います。
↑ギターアンプのヘッド部分のような形状と操作性をもつ『AMPLIFi TT』だが、DSPを内蔵したデジタル機材だ。 |
ただし、これは普通のギターアンプではなく、やはりデジタルの最先端を行くLine 6の製品。中身的には完全にデジタル機材であり、PODの進化版とも言えるものなんですよね。じつは、AMPLIFi TTの前に『AMPLIFi 75』と『AMPLIFi 150』という製品が出ていましたが、これらは以前にROLLYさんも使ったことのある機材。「以前使ったのは、ギターアンプであり、かつiPhoneやiPadの音楽再生もできるオーディオ機器でしたよね。アンプシミュレーター部分はiPadなどから操作できるという……」とROLLYさん。これらの機材からアンプとスピーカー部分を取り払ったものがAMPLIFi TTなんです。つまり、ここにアクティブスピーカーかステレオコンポなどのようなものを取り付ければ、音を鳴らせるようになるのです。
「いや、でもね、いま自宅にステレオコンポなんてない人のほうが多いんじゃないですか? それなら、簡易的ではあるけれど、テレビを使うというのも手ですよ」とROLLYさん。私にその発想はまったくありませんが、確かに音質をとやかく言わなければ、テレビのAUX INに接続するのもひとつの手ですよね。ROLLYさんも、旅先のホテルのテレビをアンプ替わりにけっこう使っているんだとか……。
そんなことができてしまうのが、このAMPLIFi TTの面白いところです。さっそくAMPLIFi TTのチューナー機能を利用したあと、AMPLIFi TTを使ってROLLYさんにギター演奏をしてもらいました。
実際に演奏してもらった部屋は、ビデオからも想像できるとおりの会議室で、防音も何も施されていない普通の部屋です。ここにオンキヨーのミニコンポが置かれていたので、これにAMPLIFi TTのラインアウトを接続。そして、AMPLIFi TTのギター入力端子にROLLYさんのギターを接続して弾いてもらったわけです。
ビデオを見ると、その雰囲気がよくわかると思いますが、じつはこのビデオには決定的な問題が……。本来、こういうギターのレコーディングでは、ギターアンプを通して出てきた音をマイクで拾うか、このようなアンプシミュレーターであれば、そのライン出力を直接録るわけですが、ここではROLLYさんの目の前にiPhoneを設置し、そのiPhoneの外付けマイクで録っているんですよね。その結果、ROLLYさんが弾くギターの生音をマイクが拾ってしまい、「ガーー」という激しい音とともに「シャリーン」というかわいい音が被さってしまっています……。本物のアンプであれば爆音であるため、同じ場所でレコーディングしても「シャリーン」なんていう音は掻き消されてまったく問題にならないのですが、ここは会社の会議室であり爆音を出すわけにはいきません。小さい音でも爆音なみのアンプの雰囲気を出せるAMPIFi TTだからこそ起こった問題でもあるわけです。まあ、AMPLIFi TTの出力を直接録っておけば、こうした問題もまったく起こらなかったわけですが……。
では本題に戻って、高性能なDSPを搭載したアンプシミュレーターであるAMPLIFi TTの機能について、もう少し見てみましょう。AMPLIFi TTは、MarshallでもFenderでもVOXでも、さまざまな著名モデルのアンプをシミュレーションすることが可能です。
↑専用アプリ『AMPLIFi Remote』では、さまざまな著名モデルのアンプをシミュレーションできる。 |
操作はBluetooth接続によって、iPadやiPhone、またAndroid端末から専用アプリ『AMPLIFi Remote』で行ないます。ここでは私のiPadを使って行なったのですが、自由にアンプのモデルを選ぶこともできますし、いちから音色を作っていくことも可能です。でも、まずは膨大に用意されているプリセットを選ぶのが手っ取り早いですね。
「すごく有名な曲のタイトルがついたギターサウンドのプリセットがたくさん並んでいるので、これを選ぶだけでも楽しいですね」とROLLYさん。曲のタイトルそのもので数多くプリセットが用意されているだけでなく、iTunes管理楽曲を再生するとその曲にマッチしたプリセットが表示され、それを選べばすぐにその音が出せるというのも面白いところです。ユーザーが作ったプリセットがネットを介して公開されているため、そうした不思議なことが可能になっているんです。
こうしてプリセットを選択したあとは、AMPLIFi TT上のパラメーターで、普通にアンプのノブを動かす感覚で調整することが可能になります。また、さらに細かく設定したい場合は、アプリ上で操作していくこともできます。
この調整は、アンプそのものに限らないのがAMPLIFi TTのすごいところ。ゲート、ワウ、コンプ、EQ、モジュレーション、ディレイ、リバーブ……と、さまざまなエフェクトも搭載されていて、これらを利用することもできるんですね。
たとえば、ディストーション系のストンプエフェクトの場合、“Facial Fuzz”、“Screamer”、“Fuzz Pi”……と某著名エフェクトを彷彿させる名前のエフェクトがズラズラと並んでおり、それを選択するだけでAMPLIFi TT上で再現することができます。これだけ膨大なエフェクトもセットで入手できると考えると、最新技術のスゴさを実感できるのではないでしょうか?
なお、以前に同じLine 6の製品で、iPad/iPhone用のアプリ『Moible POD』というものを紹介したことがありました(該当記事)。Moible PODは、Line 6製のオーディオインターフェイスを接続することで使えるアンプシミュレーターであり、操作画面などはAMPLIFi TTのものとソックリですが、両者には決定的な違いがあります。それは、AMPLFi TTは本体内蔵のDSPで処理しているのに対し、Mobile PODはiPadやiPhoneのCPUで動かしているという点です。処理能力の違いなどもありますので、音質面でAMPLIFi TTが有利ですし、レイテンシーの面でもAMPLIFi TTが優位です。価格やコンパクトさという面ではMobilePODに軍配が上がるところですが、どちらがいいかは、ユーザーによっても違ってきそうですね。
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。
『AMPLIFi TT』
●実売価格 2万8000円前後(記事作成時の価格です)
●Line 6
●関連リンク
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